奈良県保険医協会

メニュー

長期療養を要する職員への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

長期療養を要する職員への対応
【2009年5月】


 61歳の看護師が「うつ病」で長期療養が必要と思われます。老齢厚生年金を受けながら傷病手当金を受けることはできますか。

A
 現在この方は年金を請求していますか。


 彼女は以前国立病院に勤めていました。現在共済年金の退職年金と、期間が少ないのですが厚生年金の老齢厚生年金を受け取っているはずです。従って年金の請求もしているはずです。

A
 それであれば現在は在職老齢年金を受け取っています。在職老齢年金は厚生年金の標準報酬の額によって調整されています。60歳代前半と後半で調整のされ方は違います。この方の場合は60歳代前半ですから、たとえばこの方の年金受給額が月額12万円、厚生年金の総報酬月額相当額(標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額を12で割って得た額の合計額)が34万円だとするとこの方の年金額は3万円になります。傷病手当金を受け取ってもこの方の標準報酬は変わりませんので年金受給額は変わりません。


 もし退職した場合、その後は傷病手当金は受け取れますか。

A
 一般論として、老齢年金のことを考えなければ次の条件を満たしている人は傷病手当金を受けることができます。1年以上引き続き健康保険の被保険者であった人が現に傷病手当金を受けているか、受ける要件を満たしている場合期間が満了するまで受けられます。先日も全国紙が紙面で退職後の傷病手当金の解説を書いていました。そのとき、退職する前、引き続き1年以上健康保険の被保険者であることが条件という説明が抜けていました。実際には退職前1年以上健康保険の被保険者期間がないため傷病手当金を受けられない人がかなりいます。
 この人の場合、退職共済年金と老齢厚生年金を受け取れますから一般的には傷病手当金を受け取れません。しかし、共済年金と厚生年金2つの老齢給付の合計額が傷病手当金の額を下回る場合には、その差額が傷病手当金として支給されます。


 傷病手当金は標準報酬の3分の2ですから標準報酬のほうが年金受給額より高いので、この人の場合退職後は傷病手当金のみとなるということですか。

A
 そういうことになります。


 退職後の健康保険はどうなりますか。夫の扶養家族になれますか。

A
 年収の見込み額が180万円を超えますから無理です。国民健康保険か健康保険の任意継続ということになります。


 健康保険の任意継続にすると傷病手当金は任意継続の標準報酬に基づいて支給されるのですか。

A
 以前はそうでしたが今後任意継続では傷病手当金は支給されませんから勤めていたときの標準報酬に基づいて支給されます。


 うつ病が長引く場合、退職してもらうことはできますか。

A
 先生の事業所の就業規則によります。一般的には療養による長期休職者の扱いは規定されています。


 解雇ということですか。

A
 私傷病による長期療養は解雇事由に該当します。しかし、実務では一定の期間の休職期間を与え休職期間満了時に健康な状態に戻り以前行っていた仕事が支障なく出来るほどに治癒していれば復職を認め、治癒していなければ労働契約終了としています。治癒してるかどうかは、主治医ではなく事業所が判断します。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示