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遅刻が多く、スマホをいじる時間が長い職員への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

遅刻が多く、スマホをいじる時間が長い職員への対応
【2018年6月】


 勤めて3年になる職員ですが最近遅刻が多く、しかも勤務時間中にスマホをいじっています。何度か注意したのですが言い訳ばかりで改まりません。このような場合は給料を減らしても構いませんか。


 労働基準法で減給処分の限度が決まっています。1回につき平均賃金の1日分の2分の1が限度です。1賃金支払期間に複数回、懲戒事由が生じても、期間中の賃金総額の10分の1が限度ですが、何ヵ月にもわたって行うことは可能です。それはそうと遅刻はどのような具合なのですか。


 たった5分なのですが、何回も遅刻するのです。週に一度は遅刻をしています。しかもそのたびにもっともらしい理由を言うのです。


 就業規則はどうなっていますか。


 以前、労働基準監督署に電話して聞いたところ、「職員10人未満なら、なくてもいい」と言われたので就業規則はありません。労働基準法がルールになると聞きましたが。


 労働基準法は労働者の権利が書かれているだけです。その証拠に労働者が罰せられる条文はどこにもありません。いい例が、労基法には「遅刻をしてはいけません」とはどこにも書かれていないことです。職員の義務は労働契約書でも定めることは可能ですが、やはり職員に服務規律を周知し統一的に管理するには就業規則で定めるのが自然です。つまり労働者に義務を課すなら就業規則を作る以外ないのです。


 労働基準監督署へ届けるのですか。


 職員が10人未満ですから届け出の義務はありません。職員に周知すればいいのです。逆に周知していない就業規則は労働契約の内容にもなりませんから効果はありません。就業規則の無い事業所は交通法規の無い道路と同じです。お巡りさんがいても交通法規がなければ事故は起きます。


 就業規則に基づいて解雇すれば、トラブルは起きませんか。


 トラブルはどんな時でも起きます。ルールがあらかじめ示されていればトラブルが起きにくくなります。それに就業規則に解雇事由が示されていても、いきなり解雇は難しいことが多いです。2016年1月号本欄で紹介した「業務改善指導書」などで何度か注意した後でなければ難しいでしょう。スマホをいじってばかりで、重大な支障が生じれば解雇も可能かもしれませんが、今の日本では「解雇権濫用の法理」が厳然と存在しており、容易に解雇できません。私は極力、退職勧奨で済ませ、「退職合意書」を取るようにお勧めしています。


 就業規則などみんなに知らせると、有給休暇を請求するようになりませんか。


 それは仕方ありません。歯科の場合、歯科衛生士がなかなか採用できませんが、有給休暇が取れるということは被雇用者にとって強い魅力になります。倒産した会社の社長方の相談に乗っていた「八起会」の会長は倒産する会社は例外なしに就業規則がないか、あっても活用されていなかったと話していました。保団連が発行している『医院経営と雇用管理』や厚生労働省のホームページでも就業規則のモデルを見ることができます。早めに作成されることをお勧めします。

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