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職員募集の面接で採用を口約束。労働契約は成立するか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

職員募集の面接で採用を口約束。労働契約は成立するか
【2020年1月】


 受付の職員を募集しました。最初に来た人が良さそうな人だったので、その時点で採用を決めました。ところが次の日に来た人の方が若くて優秀なようだったので、こちらの人に決めたいと思います。こうしたことは可能でしょうか。


 労働契約が成立しているかどうかがポイントです。最初に来た方には、採用すると言ったのですか。


 来月から来てくれと言いました。


 そうすると、労働契約は成立しています。断ると解雇と同じことになります。


 だけど、まだ労働契約書は結んでいません。内定の段階なら問題ないのではないですか。


 まず、労働契約は口頭でも成立します。それに、仮にこれが内定だとしても労働契約は成立しています。
 よく内定は「婚約」であって「結婚ではない。いつでも解消できる」と思っている人がいますが、これは誤解です。内定はそのような意味では「結婚」なのです。


 でも、採用後14日以内であれば自由に解雇できるのではないですか。


 労働基準法で書かれていることは、試用期間が14日を超えていなければ解雇予告手当を支払わなくていいというだけで、解雇が自由という意味ではありません。


 試用期間というのはお試しの期間ですから、本契約をしないと伝えればいいのではないのですか。


 そんなに甘くはありません。
 通常の解雇のハードルが1メートルとすれば、試用期間はハードルが70~80センチと考えられます。簡単に本採用拒否はできません。


 私の知人の息子さんは出版社に仮採用され勤めていましたが、本採用されなかったということで今は失業中ですよ。


 それはその方が法律を知らないため訴えなかったか、そんな会社に行きたくないということで訴えなかっただけではないかと思います。
 もし、弁護士が付いたり、一人でも加入できる労働組合やユニオンの支援を受けて団体交渉になったら、かなりの解決金を請求されるでしょう。給料の1年分を請求された事例もあります。これは珍しいことではありません。


 何とか辞めてもらうことはできませんかね。


 法律的には難しいと思いますが、本人と誠意をもって話し合うしかありません。また、一定の解決金で話し合うことは可能です。仮にその方が在職中であれば採用を断念してくれやすいと思います。
 応募してくる人にとっては人生をかけているわけですから、その後の人生を左右しかねないことを軽々しく判断してはいけないと思います。採用は面接予定者全員と面接してから決定すべきです。

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