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有給休暇を強く要求する中途採用者がいる

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

有給休暇を強く要求する中途採用者がいる
【2013年7月】


 看護師も含めて職員7人の診療所です。最近、中途採用した受付の職員が半年たったということでいきなり5日間の有給を請求してきました。全職員がこんな調子で有給休暇を請求したら、とてもやっていけません。有給休暇は、どこの医療機関でも職員の希望通り与えているのでしょうか。

A
  日本では、ヨーロッパと違い大企業も含めて有給休暇の消化率(本来とれる有給休暇を実際どのくらいとっているかの割合)は、50%未満です。


 有給休暇を請求をしないと、採用時に約束させることはできますか。

A
 それはできません。労働基準法では、請求する時季に与えなければならないとなっています。労働基準法は、働く人の最低の条件を定めた法律ですから、法律以下の労働条件で働かせることはできません。


 何回も転職を繰り返した職員で、自分の権利ばかり主張しています。今までは、みんな仲良く働いてくれていました。こんなに自分の権利を主張する職員は初めてです。

A
 これまで、他の職員が休日以外に旅行したいと言ってきた時はどうしていましたか。


 たまにしかないことですから、なんとかやりくりをして休ませていました。

A
 その時、給料の支払いはどうしていましたか。


 有給扱いにし、差し引くようなことはしませんでした。それに夏休みも、年末年始にも休みを十分に与えていましたから、誰も苦情は言いませんでした。

A
 その時の給料はどうしていましたか。


 休日だからといって、給料を差し引くようなことはしませんでした。私の診療所は日曜日と水曜日が休みで、祝日も休みです。その上、年末年始と夏に休みがあります。休日は十分与えていると思います。

A
 それでは、計画休暇制度を導入されたらどうですか。

 年次有給休暇は、本来、労働者の請求を待って付与するのが法律の建前ですが、これでは取得率が上がらないので、計画的に休暇を振り分けて与えるのです。例えば夏季、年末年始などに診療所を休業にして、一斉に休暇を付与してしまう方式です。


 全部の休暇を割り振ってしまうのですか。

A
 5日間だけは、個人が自由に利用できるようにしなければなりません。それを超える部分の割り振りです。


 年末年始と夏休みは、給料を支払っていましたが休日でした。それを有給休暇にすることかできるのですか。

A
 できます。休日と休暇の違いは、休日はもともと労働義務のない日です。休暇は労働義務があるけれど、労働を免除する日です。従って年末年始に有給休暇を取らせるには、その日を労働日にして、有給休暇にするという手続きが必要です。これは労働者からすれば労働契約を不利益に変更することになりますから、一方的にはできません。労働者の同意が必要です。先生のところには就業規則がありますか。


 ありません。

A
 この際、労働者とよく話し合って就業規則を作成し、同意を得ることを検討してください。


 新入職員に対して、計画付与したら、それだけで有給休暇が終わってしまいます。

A
 5日間は有給を与えなければなりません。有給休暇扱いにしてもいいのですが、休業手当(平均賃金の60%)を支払う方法もあります。いずれにしろ計画付与するには、労基署に届けなくてもいいのですが、協定が必要です。

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