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新入職員の歓迎会は労働時間か

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

新入職員の歓迎会は労働時間か
【2017年7月】


 パート職員が入所しました。当院は主婦が多いので長時間の歓迎会はできません。診療終了後院内の休憩室で出前の寿司を取り、希望者にはアルコールを提供し1時間半程度の新入職員の歓迎会を行いました。誰も残業代を請求してきませんが本来は残業となるのでしょうか。


 「労働時間とは何か」ということは労働基準法に定義されていません。しかし、最高裁の判例もあり「使用者の指揮命令下に置かれている時間」となっています。今回の歓迎会が強制出席なら労働時間となります。


 お酒を飲んでも労働時間になりますか。


 お酒を飲むか飲まないか関係ありません。実際のところどのようになっていたのですか。どうしても出席しなさいと言ったのですか。


 いえ、そのようには言っていません。


 それであれば労働時間ではないとしていいと思います。ただ強制かどうかの判断は難しい場合があります。したがってこれからはそのような会をするときは任意参加であるかどうかはっきりさせることが必要です。


 仮に強制参加で残業代も支払うとした場合、会場で転んでけがをしたら労災になりますか。


 泥酔する、あるいは酒癖の悪い人同士がケンカになりけがをするなどというようなことでもなければ、労災となると思います。しかし飲酒を伴う会合は強制にしない方がいいと思います。アルコールの苦手な人を無理やりに飲酒が伴う会合に参加させることはパワハラになる恐れがあります。


 お酒が飲めなくても酒席の好きな人もいます。このような人の参加は問題ないですか。


 問題ありません。


 任意とするには歓迎会の会費を取らなければいけないのでしょうか。


 労働時間かどうかを判断するのにそれは関係ありません。むしろ飲酒運転はしないさせないなどを明確にしておくべきです。


 自転車通勤の人も飲酒運転は禁止する必要がありますか。


 自転車運転の場合、「酒酔い運転は罰則があるけれども酒気帯びはないから少しならいい」という人もいますがこれは危険な考えです。


 仮に歓迎会の後帰宅中に駅の階段で転んでけがをした場合など通勤災害になりますか。つまり飲酒していたとして通勤災害にならないということはありますか。


 行政通達では「社会通念上就業と帰宅との関係を失わせる」ほど、つまり業務終了からけがするまでの間が長時間とならない限り就労関連性がありとされ、認めるとされています。ただし酩酊状態であれば認められません。


 長時間というとどのくらいの時間をいいますか。


 はっきりしていませんが「2時間5分で就業関連性が失われているが、超えている時間がわずかであるのでその他の事情を考慮すれば就業関連性はあり」として通勤災害と認められたことがあります。

雇用問題Q&A

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