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平成18(2006)年度からの改正高年齢者雇用安定法への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

平成18(2006)年度からの改正高年齢者雇用安定法への対応
【2006年1月】


私の医院には「団塊の世代」が何人かいます平成18(2006)年4月から65歳までの定年延長が義務付けられるのですか。


単純に定年延長を強制しているわけではありません。平成18(2006)年4月から(1)定年の引き上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止、のうちからいずれかの措置をとれといっています。


希望者全員をいきなり65歳まで雇わなければならないのですか。


いえ、老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げに合わせて平成25(2013)年4月1日までに段階的に65歳までの引き上げをすることになっています。
・平成18(2006)年4月1日~平成19(2007)年3月31日までに62歳
・平成19(2007)年4月~平成22(2010)年3月31日までに63歳
・平成22(2010)年4月1日~平成25(2013)年3月31日までに64歳
・平成25年4月1日から65歳
というスケジュールで定年の引き上げが行われます。


60歳を機に辞めてもらいたい人もいますし、まだまだ働いてほしい人もいます。私が、引き続きいてほしい人だけを雇うというようにできませんか。


本来は定年を引き上げ、希望者全員を引き続き雇用できれば一番良いのでしょうが、各事業所の実情に応じて労使の工夫による柔軟な対応が取れるようになっています。先生のところで引き続き雇用したくない人というのはどのような人ですか。


よく遅刻する人です。遅刻の理由もそのたびにもっともな理由を言います。それと協調性のない人。陰で若い従業員の悪口を言う人。能力の割に給料が高い人です。


それならば、定年延長ではなく、継続雇用制度を導入されたらどうでしょうか。


「継続雇用制度」とはどんな制度ですか。


労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準を定め、この基準に基づいて引き続き雇用する制度を設ければいいのです。


職安から持ってきてくれたリーフレット『継続雇用制度の対象者にかかる基準事例集』を見ると、「人事考課、昇給査定において、著しく評価が悪くないこと」などとありますが、私のところでは人事評価などしていません。このようなときは基準をどうやって決めればいいのでしょうか。


この基準の事例集はどこの事業所にも当てはまるように書いてあるため、具体性に欠けるかもしれません。大切なことは、この基準を参考にしながら、労使で話し合って決めればいいのです。


話し合って決めればどんな基準でもいいのでしょうか。例えば、「医院が必要とするもの」という基準でもいいのでしょうか。


一応このリーフレットには「会社が必要とする者」「上司の推薦がある者」は基準を定めていないに等しいので好ましくないとしています。私も職安の担当者に「労使が話し合って決めたのだからそれを職安がとやかく言うのはおかしいのではないのか」と言ったところ反論はありませんでした。したがってまず労使で話し合って決めることです。どうしても決まらない時は中小企業においては5年間だけ就業規則で定めることができます。就業規則の変更は別に労働者の同意は必要ありません。意見を聞くだけでいいのです。


給料を下げることはできますか。


それは契約次第です。給料を下げた時は高年齢継続雇用給付制度を活用できます。たとえば、60歳の時の賃金が40万円の人が20万円に下がれば3万円雇用保険から支給されるというものです。この他、老齢厚生年金も支給されることもあります。

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