奈良県保険医協会

メニュー

勤務中にスマホを見るスタッフの給与減額は可能か

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

勤務中にスマホを見るスタッフの給与減額は可能か
【2019年2月】


 勤務時間中にスマホを触る、菓子を食べる、受付で仕事と関係ないことについておしゃべりをするなど、勤務態度の良くない職員がいます。注意してもなかなか直さないので給料を減額しようと思いますが、これは可能でしょうか。


 労働基準法で制裁の制限は決まっています。減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えて行うことはできません。何回違反しても1ヵ月分の賃金の総額の10分の1を超えることはできないとなっています。
 ただし、次の月に繰り越すことは可能です。ただこれは就業規則に服務規律が明確になっいるときの話です。


 どんな労働者も職務専念義務があるのではないですか。職務に専念していないのですから規定などなくてもいいのではないでしょうか。


 しかし処分となると就業規則や労働契約書などに明確な規定がないとできません。それに先生のところに就業規則はあるのですか。


 これまではこんな職員はいなかったので就業規則の必要はありませんでした。それに職員は8人なので、10人以下は労働基準監督署への届出は必要ないということで就業規則はありません。


 スマホを触る、お菓子を食べるなどしたとき、注意しましたか。


 何回もしています。


 注意した書面はありますか。


 書面はありませんが何回も口頭で注意しています。


 それでは証拠がないと同じで、裁判になったときには、無力です。こうしたトラブルを防ぐためには就業規則が必要です。厚生労働省はモデル就業規則をネット上で発表しています。また、書面で注意するときの業務改善指導書(イエローカード)の書式は当事務所のウェブサイトからダウンロードできます(http://www.sogaoffice.jp/format/)。これらを参考に早めに作成することをお勧めします。


 就業規則ができるまで、減給処分はできませんか。


 これまでも減給の慣行があり、当人が了解すればいいのですが、今の段階では書面で注意し個別によく話した方がいいと思います。
 減給というのは働いた分から処分として給料を差し引くことなので、簡単にはできません。しかし、話し合って今後の給料を下げることは可能です。労働契約ですからこれまで何も決まっていないのであれば、まずは話し合いをする必要があります。
 また、スマホをいつも見ているということですが、何を見ているか分かりますか


 よく分かりません。


 最近スマホに関して依存症のようになっている人もいます。私の関与先の事業所では、どうしても仕事中スマホを長時間見ることをやめない人がいましたので、話し合って退職してもらいました。
 とはいえ、仕事中に関係のない話をすることやお菓子を食べることなど、それが業務の妨げになるということを本人が分かっていない場合もあります。まずは、よく説明してあげることが必要です。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示