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仕事が遅い職員を解雇できないか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

仕事が遅い職員を解雇できないか
【2016年1月】


 仕事が遅くて患者さんからも苦情が寄せられる職員がいます。業務にも支障をきたし、おそらく他の職員にも悪影響を及ぼしていると思います。こういう職員の場合、解雇することはできないのでしょうか。


 今の日本では解雇は簡単ではありません。


 1ヵ月分の手当を支払えばいいのではないですか。


 労働基準法上はそれでいいのですが、労働契約法では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」となっていて、裁判になるとなかなか認められるものではありません。


 私としてはもう我慢できないのです。


 その方の勤務年数はどのくらいですか。


 6年です。6年間も我慢してきました。もう限界です。


 6年間にその方に改善についてどんな指導をしましたか。


 何度も早く仕事をするよう注意しましたが、「仕事が多すぎるから」などと言い訳し、全く反省がありません。患者さんからクレームがあっても、「患者に問題がある」と言う始末です。それに服装もなんだか乱れてます。


 書面ではどのくらい注意しましたか。


 書面ではしていません。


 一般的には口頭ではなかなか改まらないことが多いようです。初めは口頭でも、何度注意しても改まらないときは「業務改善指導書」(イエローカード)で指摘し、改善の報告書を文書で取っておくべきです。むろんこのイエローカードはその人をやめさせるために実施するのではありません。なんとかまっとうな普通の職員になってもらいたいという気持ちで実施することが必要です。


 そのような文書を渡そうとしても受け取らないときはどうするのですか。


 そのようなときは、面倒でもその時のやり取りの記録などを取っておくといいでしょう。裁判所は「証拠書類」は重視しますから、いざ裁判になったときは有用です。実際には裁判まで行くのはまれで、きちんとイエローカードを出すなどプロセスを踏んで対処すれば、裁判になる前に多くの場合は解決します。


 そんなに簡単に解決できるとは思いません。


 確かに問題職員ほど自分の問題を自覚していません。それにしても6年も雇用してしまったのですから、どんな教育をしていたのですかということになりかねません。もう一度仕事内容を検討し、それでも改善の見通しがないのであれぱ解雇ではなく退職勧奨したらいかがでしょうか。


 解雇と違うのですか。


 退職勧奨は簡単に言えは「あなたは辞めても辞めなくてもどちらでもいいけど、どうもうちには合わない。よそに行った方があなたの能力を発揮できるのではないか」といった感じです。雇用保険の離職票も解雇と同じく給付制限はありません。むろん大企業で問題になっている執拗な退職勧奨はすべきではありません。「突然の提案は拒否される」と言われています。しばらくたつと思い直して退職に合意してくれることもあります。

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