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パートあるいは経営者の労災

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

パートあるいは経営者の労災
【2009年6月】


 労働保険の申告書の届くのが遅れていますが夫丈夫でしょうか。

A
 労働保険の年度更新の申告・納付時期はこれまで4月1日から5月20日までとされていましたが、今年から6月1日から7月10日までに変更されました。社会保険の算定時期に合わせたようです。


 算定方法はどうなりますか。

A
 これは変わりません。4月1日から3月31日までに支払う賃金総額に保倹料率を乗じて得た額になります。申請のための申告書は5月末までに送られることになっています。


 少し気になるところがあります。パートの人は業務災害や通勤災害の時、労災保険からの給付はどうなるのでしょうか。

A
 パートの方も労働者ですから労災保険の適用はあります。


 名前をどこにも届けていませんが大丈夫でしょうか。

A
 大丈夫です。極端にいえば、今日来たアルバイトが今日業務災害に遭っても労災は適用されます。ただ、休業補償などの時困りますから労時契約書か労働条件通知書は必ず発行するようにしてください。


 わかりました。私は、どの従業員よりもたくさん働いていますが私が、業務災害になった時はどうなりますか。

A
 先生のところは健康保険はどうなっていますか。


 そういえば、私のところは一人医療法人になり、初めは「協会けんぽ」でしたが、医業健保のほうが保険料が安いので医業健保に切り替えました。

A
 そうすると、健康保険は使えません。しかも先生はほかの人より働いているとはいえ労働者ではありませんから労災保険は使えません。


 健康保険からも労災保険からも支給されないということは、どこからも出ないということですか。

A
 そうなります。先日も従業員30人ほどの医療法人の理事長が診療所の階段で転んで足をくじきましたが、保険が効かなかったので30万円近く支払うことになりました。まさに中小企業主は保険の谷間にいるのです。


 その場合30万円程度で済んだからよかったものの大きなけがでは大変ですね。

A
 そうです。したがって、中小企業主も実態からは労働者と変わらないので労災保険の「中小企業主特別加入」という制度があります。


 希望すればだれでも加入できるのですか。

A
 いいえ、条件があります。労働保険料の手続きを労働保険事務組合に事務委託しなければなりません。


 労働保険事務組合はどこにあるのですか。

A
 通常は商工会議所、社会保険労務士などがやっていますので、まずはここへ問い合わせて下さい。保険医協会が労働保険事務組合となっているところもあります。手続きもだいぶ簡単になりましたから、会員サービスのためにも労働保険事務組合を作ることを勧めています。


 特別加入の保険料はどうやって決めるのですか。

A
 賃金日額を自分で決めそれに基づき保険料を算出します。賃金日額は3,500円から20,000円の範囲内で自分で決めます。たとえば賃金日額を1万円とすれば年間365万円となり医療の保険料率は3/1000ですから年間の保険料は365万円×3/1000=10,950円となります。こうしておけば業務災害・通勤災害の治療費は無料、休業補償は日額8,000円となります。いろいろな民間の保険に加入しているので休業補償は少なくていいというのであれば日額を3,500円で設定すれば年間の保険料は3,833円で済みます。

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