関係国会議員へ要請書3題(プログラム法、生活保護制度改悪、特定秘密保護法の各問題)を提出:奈良県保険医協会
奈良県保険医協会11月12日、次の3件の要請書を、地元関係国会議員をはじめ各関係委員会所属の国会議員の各事務所へ、それぞれ送付しました。
(1)「プログラム法案」の廃案を求める要請書
→送付先: 衆議院厚生労働委員会に所属の議員45名、参議院厚生労働委員会に所属の議員25名、地元関係国会議員(衆参)8名
(2)社会保障の土台である生活保護制度の改悪は断念を―生活保護法「改正」案、生活困窮者自立支援法案の廃案と、生活保護基準引き下げの撤回を求めます
→送付先: 衆議院厚生労働委員会に所属の議員45名、参議院厚生労働委員会に所属の議員25名、地元関係国会議員(衆参)8名
(3)国民から真実を覆い隠す特定秘密保護法案の廃案を求める
→衆議院国家安全保障に関する特別委員会に所属の議員40名、地元関係国会議員(衆参)8名
送付した要請書の内容はそれぞれ、次の通り。
理事長 坪井裕志
貴職には、日頃より国政の重責を果たされていることに心より敬意を表します。
私たち奈良県保険医協会は、奈良県の保険医1000人あまりで構成し、患者・国民の命と健康、国民皆保険制度を守るために活動している団体です。
さて、ご存じの通り、医療など今後の社会保障制度改革の手順を示した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」(以下、「プログラム法案」)が国会に提出され、11月1日から審議が始まりました。
「プログラム法案」は、「個人の自助を喚起する仕組みを導入」と明記し、「自助・自立のための環境整備を推進する」として、国民の生存権を保障する国の責任を放棄し、社会保障の理念を変質させます。また、消費税を増税した上で、医療、介護、年金の給付削減・負担増の日程を押しつけるものであり、断じて容認することはできず、廃案を求めます。
医療については、70~74歳の患者負担の2割への引き上げをはじめ、入院時の食事の自己負担引き上げなど、負担増計画が盛り込みまれています。医療提供体制では、急性期病床を軸にした平均在院日数の短縮などで病床を絞り込み、患者も集約化していく方向を示しており、入院難民の増加が懸念されます。さらに、保険料の引き上げにつながる国保の都道府県運営の方針が盛り込まれました。
介護においても、利用料引き上げ、要支援者の保険はずし、施設からの要介護1・2の追い出しなど、制度をますます利用し難くする内容を含んでいます。
70~74歳の患者負担を現行の1割から2割に引き上げれば、複数の病気にかかることが多い高齢者の受診抑制をもたらし、重症化をまねく恐れがあります。70歳になり、患者窓口負担が3割から1割に軽減されると、心身の健康状態が改善する可能性が高いことが研究調査からも明らかになっています。
今でも高すぎる患者窓口負担のもとで、受診抑制は深刻です。さらなる負担増・給付削減は国民のいのちと健康を脅かすものであり、私たち医師・歯科医師は断じて許すことはできません。
下記事項の実現に向けて、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
一、 「プログラム法案」を廃案にしてください。
理事長 坪井裕志
社会保障の土台である生活保護制度の改悪は断念を
―生活保護法「改正」案、生活困窮者自立支援法案の廃案と、生活保護基準引き下げの撤回を求めます―
貴職には、日頃より国政の重責を果たされていることに心より敬意を表します。
私たち奈良県保険医協会は、奈良県の保険医1000人あまりで構成し、患者・国民の命と健康、国民皆保険制度を守るために活動している団体です。
さて、先の通常国会において生活保護法「改正」案(以下「改正」案)、生活困窮者自立支援法案は、国民の強い反対もあり廃案となりました。しかし、政府は今国会に両法案を再提出し、11月5日から参議院先議で審議が始まりました。
「改正」案の内容は、申請にあたっての書類提出の義務付け、扶養義務の強化(親族への保護開始の通知、親族への調査権限の強化等)などが盛り込まれ、困窮する要保護者に対して制度を利用しづらくし、国民を制度から締め出すものとなっています。生活困窮者自立支援法案も「就労支援」を名目に、生活保護の利用を妨げる手段とされる恐れがあります。
医療扶助については、「適正化」と称して、指定医療機関の「指定(取消)に係る要件の明確化」や「指定の更新制の導入」などが盛り込まれており、指定医療機関に対する締め付けの強化で、供給面からも医療扶助を制限しようとしています。また、被保護者に対し、医師が認めている場合としながらも、可能な限り後発医薬品の使用を促すとしており、明文化することにより後発医薬品が事実上強制される危険性が高く、医療に差別が持ち込まれる恐れがあります。
今年8月、生活保護基準の引き下げが強行されました。引き下げの影響は生活保護利用世帯の96%にも上り、再来年4月までに世帯によっては最大で10%もの引き下げとなります。特に子育て世帯への影響が大きく、国が目指す子どもの貧困解消とも矛盾します。受給者からは不安と怒りの声が上がり、「審査請求」も全国で相次いでいます。
そもそも生活保護の「捕捉率」は2割程度と国際的にみても低く、必要な世帯に生活保護が行き渡っていないことこそが問題です。国民のいのちと健康を守る医師・歯科医師として、下記事項について強く要請します。
一、生活保護法「改正」案と生活困窮者自立支援法案を廃案にしてください。
一、生活保護基準の引き下げは撤回してください。
理事長 坪井裕志
国民から真実を覆い隠す
特定秘密保護法案の廃案を求める
貴職には、日頃より国政の重責を果たされていることに心より敬意を表します。
さて、安倍内閣は10月25日、特定秘密保護法案(以下、本法案)を閣議決定、国会へ提出しました。本法案は、政府が秘匿を要すると判断した情報を「特定秘密」に指定し、これを漏洩した者、入手しようとした者は重い刑事罰(懲役10年)を科し、漏洩や取得について未遂、共謀、教唆、煽動も罰するとしています。
これは、国民の知る権利を侵害し、報道の自由を脅かすものです。そもそも民主主義社会の基盤として、国の情報を国民が知る権利は決して侵してはいけません。現行の情報公開法の不備が取りざたされているときに、国の情報を恣意的に国民の目から遠ざける法律など言語道断と言わざるを得ません。
国の秘密保護には、既に国家公務員法や自衛隊法などに定めがあります。本法案の目的(第一条)には、既存の法令ではなぜ不十分か客観的理由が一切明記されていません。
本法案は、①防衛、②外交、③外国の利益を図る目的の安全脅威活動の防止、④テロ活動防止の4分野に関し、「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要」な情報を「特定秘密」に指定するとしています。しかし、情報の範囲が明確でなく過度に広範です。
そして「特定秘密」の指定に関する各項目は一義性に欠け、拡張解釈の恐れがあります。その判断は、時の「行政機関の長」の恣意的な判断に委ねられてしまいます。
さらに問題は「適正評価制度」です。これは秘密漏洩防止のため、予め情報を管理する人の「適正」を評価するものです。調査項目は住所や生年月日だけでなく、外国への渡航歴やローンなどの返済状況、精神疾患などでの通院歴等々多岐にわたり、情報を管理する公務員や業務受託を受けた民間人本人に留まらず、その家族や友人にまで及ぶ可能性があります。このような制度はプライバシー侵害、人権無視も甚だしく到底容認できません。
本法案には事前の批判を受けて、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」との条項が含まれています。しかし、実効ある形で担保される保障がなく、全体として「国民の知る権利」「取材・報道の自由」を著しく侵害する性質に変わりがありません。
今必要なことは国民の知る権利を充実させるための情報公開法の改正であり、特定秘密保護法ではありません。
奈良県保険医協会は本法の制定に反対し、廃案とすることを求めます。
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