新型コロナウイルス感染症拡大で県へ緊急要請:奈良県の地域医療を守る会
奈良県保険医協会も参加する「奈良県の地域医療を守る会」は4月30日、代表幹事の連名による県知事あて要請書を奈良県へ提出し、新型コロナウイルス感染症拡大の非常事態に、医療機関と県民がともに立ち向かえるよう求めました。以下に全文を掲載します。
奈良県知事 荒井正吾様
代表幹事 宮際 幹(奈良県保険医協会副理事長)
代表幹事 宮野栄三(奈良県民主医療機関連合会会長)
代表幹事 弘田嘉伸(奈良県医労連執行委員長)
代表幹事 中村篤子(奈良自治労連書記長)
感染症法にもとづく病床確保要請はやめて、
感染拡大の非常事態に医療機関と県民がともに立ち向かえるよう県の取り組みを求める
日頃より、新型コロナウイルス感染拡大への対応で日夜奮闘されておりますことに敬意を表します。
奈良県においても、新型コロナウイルス感染症拡大はかつてなく広がり、病床、宿泊施設とも占有率が70%をこえ、待機者も400人越えとなり、重点医療機関への入院待ちの間に、症状が悪化するという深刻な事態が現場で発生しています。医療崩壊は、まさに今進行しており、非常事態といわざるをえません。
「感染症法にもとづく要請」ではない要請に
そうした中、貴職は4月15日、県内のコロナ対応病床がひっ迫しているとして、県内の全75病院に対し、病床確保要請を行いました。それは全国初の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、改正法と略す)に基づく要請でした。
改正法による要請は、協力を拒む病院への「勧告」や病院名の公表といった強権的な措置につながる位置づけにあり、これでは、まるで、医療機関の協力が進まないから、困難が起こっているかのような演出になっており、県、市町村、保健所、医療機関等、そして県民が一致団結して取り組まなければならない非常事態の時に、病院への不信感を招きかねず、加えて現場で奮闘してきた病院関係者にさらなる重圧を与え、分断や士気低下につながりかねないものです。
加えて申せば、改正法にもとづく病床確保要請を、県下全病院へ一律に発出したことは、県が把握しているはずの小規模病院、療養病床のみの病院など、到底要請に応じられない病院も含めた機械的なものと言わざるを得ず、病床確保への財政支援等の県独自の施策も何ら示されることもなく、いわば一方的なお願いだけのかけ声で、受け取った病院や医療関係者には冷たく響いています。それでも、苦境にあっても県民の命を守るため、苦渋の判断のなかで病床確保を積極的に検討、対応する病院もあるのが現状なのです。
奈良県の地域医療を守る会として、改正法にもとづく協力要請は撤回し、改めて、これまで新型コロナウイルス感染症対策で構築してきた協力関係にもとづき、病床確保や患者受け入れの要請とされるよう強く求めます。
県民と医療機関が協力して抑えこみ図るよう県は取り組みを
感染対策の基本はまず、感染者の発生を減らすこと、感染者を早期にみつけ隔離すること、感染者に必要なケアや治療が受けられるように県・保健所体制と連携し、そして医療機関の連携、予防としての接種を進めることです。
1.県民の協力には補償を
奈良県の感染状況に対して、第一に感染者を増やさない取り組みとして、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置や、今まで以上の県民の協力と休業等への補償の打ち出しが求められます。
2.医療機関、福祉施設等の検査
次いで、感染を広げない、重症化を防ぐという点では、県も以前計画していた、医療機関、福祉施設等の一斉・定期的な大規模な検査の実施が必要です。
3.受け入れ先拡大のため広範な連携
そして、受入れ病床、宿泊施設を早急に増やし、必要に応じて入院、宿泊療養ができる体制をつくりだすこと、今年2月16日新型コロナ本部事務連絡「新型コロナウイルス感染症の医療提供体制の整備に向けた一層の取組の推進について」のイメージのような連携体制を構築されることを、県をあげて取り組んでいただくことを要請します。
4.第一線医療現場の積極的な実情把握と支援
その上で、待機者が400人を超えており、重点病院以外でも一定の期間、陽性患者の対応にあたることが避けられない状況がおこっています。そうした場合も、「やむをえない」ではなく、現場の実情や困りごと、要望を積極的に把握するよう努め、治療、衛生材料の適時・適切な供給や、様々な支援等、県として責任をもってバックアップする体制の構築・実践をお願いします。
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