奈良県保険医協会

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国民を制度から締め出す生活保護法「改正」案の廃案を求めて要請書を送付:奈良県保険医協会

 奈良県保険医協会は6月4日、田村憲久・厚生労働相と、衆参両院の厚生労働委員会に所属する国会議員に対して、下記の要請文書をファクス送付しました。

2013年6月4日
厚生労働大臣 田村 憲久 殿
奈良県保険医協会
理事長 坪井裕志
国民を制度から締め出す
生活保護法「改正」案の廃案を求めます

 貴職におかれましては、国政の重責を担っての日夜のご活躍に敬意を表します。
 私たち奈良県保険医協会は、おもに奈良県で開業・勤務する保険医1000人あまりで構成する団体です。保険医の経営と生活の守り、国民医療の向上を目指して活動しています。

 政府は5月17日、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下、「改正」案)を閣議決定し、国会に提出しました。

〈保護申請をしづらくする「水際作戦」の合法化〉
 「改正」案は、生活保護の申請に際し、「要保護者の住所及び氏名」に加え「要保護者の資産及び収入の状況」等、「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出しなければならないとし、保護の要否判定に必要な「厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」としています。
 また、扶養義務について、保護の実施機関が要保護者の扶養義務者その他の同居の親族等に対して「報告を求めることができる」とし、保護の開始決定をしようとするときは、あらかじめ扶養義務者に対して「厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない」と規定しました。事実上、扶養義務が要件化されています。
 現行では口頭による申請が認められ、扶養も要件とはされていません。
 書類の不備や親族の扶養などを理由に申請を受け付けない、いわゆる「水際作戦」は違法です。しかし、現在でも「水際作戦」によって必要な保護が受けられない事態が続発し、さらには餓死するという悲惨な事件も各地で起きています。
 「改正」案は、この「水際作戦」を合法化してしまうものです。また、扶養義務を要件化することで、居場所を知られたくないDV被害者や家族に迷惑がかかることを恐れる生活困窮者が申請をためらう事例がさらに増えることになりかねません。

〈医療機関を通しての医療扶助への制限も〉
 「改正」案で医療扶助については、「適正化」と称して、指定医療機関の「指定(取消)に係る要件の明確化」や「指定の更新制の導入」などが盛り込まれており、指定医療機関に対する締め付け強化で、供給面から医療扶助を制限するものです。
 また、被保護者に対し、医師が認めている場合としながらも、可能な限り後発医薬品の使用を促すとし、義務化でなくとも明文化により後発医薬品の使用が事実上強制される危惧が高く、医療に差別が持ち込まれる懸念があります。
 生活保護受給者のうち、60歳以上の高齢者は5割を超えています。世帯別では、高齢世帯42.9%に次いで、傷病者世帯・障害者世帯が33.1%です。受給世帯の8割は、医療扶助を受けて治療しており、医療扶助の制限は受給者の生命にもかかわります。

〈低い捕捉率こそ問題〉
 生活扶助基準額を下回る所得にあって実際に保護を受けている世帯の割合を示す「捕捉率」は2割程度と国際的にも低く、そもそも必要な世帯に生活保護がいきわたっていないことこそが問題です。

 「改正」案は、国民をより一層生活保護制度から遠ざけ、締め出し、憲法に定める生存権を侵害するもので、断じて容認することはできません。国民のいのちと健康を守る保険医(医師・歯科医師)として、「改正」案の廃案を強く求めます。
 加えて、このように重要な問題を含む「改正」案であるにもかかわらず、衆議院厚生労働委員会では、わずか2日間の審議しかされずに採決されたことも残念でなりません。国会では十分に慎重な審議のうえ、その問題点をふまえて廃案とされるよう重ねて強く求めます。

以上


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