「共通番号」法案の廃案を求めて、関係国会議員へ要請:奈良県保険医協会
奈良県保険医協会は4月19日、奈良県の地元国会議員と、衆参両院の内閣委員会の国会議員に対して、下記の要請をファクスで送りました。
理事長 坪井裕志
「共通番号」法案の廃案を求めます
貴職におかれましては、国政の重責を担っての日夜のご活躍に敬意を表します。
私たち奈良県保険医協会は、おもに奈良県で開業・勤務する保険医1000人あまりで構成する団体です。保険医の権利、生活・経営を守り、国民医療の向上をめざして活動しています。
さて、政府は、国内居住者全員に識別番号を割り振り、税、社会保障、災害に係わる個人情報を一元的に管理する仕組みをつくる「共通番号」関連4法案の、今国会での成立をめざしています。
1.情報漏洩の危険、「なりすまし」犯罪のおそれ
「共通番号」法案は、サイバー犯罪などが絶えない時代にもかかわらず、ネットワークシステムのセキュリティが脆弱であり、情報漏洩や「なりすまし」犯罪の危険が高まることが第1の問題点です。
法案には、税、社会保障、災害以外の「他の行政分野」、「行政分野以外」の分野(=民間)への利用拡大が明記されています。行政、民間を問わず個人情報を名寄せすることが可能となり、個人番号付きのデータベースが、そこかしこにできる事態となります。
多くの個人情報をひとつの番号で一元的に管理することは、諸外国において深刻な社会問題となっている大量の情報漏洩によるプライバシーの侵害や、「なりすまし」犯罪などの危険が高まることになります。
とりわけ、自らの個人情報を確認することができる「マイ・ポータル」は、専用回線ではなく汎用のインターネット経由でアクセスするため、情報漏洩の危険が極めて高くなります。
2.医療をはじめ社会保障の給付抑制につながるおそれ
第2の問題点は、医療をはじめ社会保障の給付抑制と、税・保険料の徴収強化に利用する狙いが込められていることです。
法案の基本理念では、「社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持」を行うことが明記されました。
医療分野の利用範囲は、「保険料の徴収事務」と「保険給付の支給」とされていますが、共通番号で名寄せすれば、個人が負担した保険料と受けた給付の状況が分かる状況となります。「給付に見合う納付」の名で、保険料取り立て強化や医療給付の制限につながることが懸念されます。
患者の病歴や診療内容など「医療の身体情報」については利用範囲から外れていますが、今後、共通番号とは異なる番号を使うことも含め、検討していくことが明らかになりました。
いったん制度を導入すれば、機微性の高い「医療の身体情報」など個人情報を、民間保険会社などの営利企業が利用しないという保障はありません。
さらに、共通番号制度がインフラとなって、国民一人ひとりの社会保障の給付と負担を収支勘定する「社会保障個人会計制度」の創設につながる危険があります。
3.費用対効果が不明なまま、制度構築に大きなコスト
第3の問題点は、費用対効果の根拠が明確でないまま、国民が新たに負担し続けることです。
政府はICチップ付き個人番号カードを積極利用する方針で、そのシステム構築の費用は約2700億円としていますが、国会審議の中では、固まった金額でないことを明らかにしました。ランニングコストについては明らかにされていませんが、毎年、数百億円単位かかると予想されています。
一方、導入した際の効果について、政府は具体的な金額を明らかにしていません。
費用対効果の根拠が全く不明確なまま、国民に対して新たな負担を押し付けることは断じて認められません。
私たちは、このように大きな問題点があり、医療や社会保障給付抑制につながりかねない「共通番号」制度の導入に反対します。関連法案の廃案を強く求めます。貴職のご理解とご協力をお願い申し上げます。
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