普通徴収者では約9%が未納―後期高齢者医療保険料
※ 左の表はクリックすると拡大表示され、鮮明に表示されます。
後期高齢者医療の保険料は、多くの方が年金からの天引き(=特別徴収)ですが、年金額が月1万5000円に満たない場合や介護保険の保険料と合わせた額が年金額の半額を上回る場合は納付書により市町村へ納入するなどの納付方法(=普通徴収)となります。
この普通徴収に該当する方には、保険料の滞納が生じ得ます。後期高齢者医療制度の法令では、1年間保険料を滞納した場合は通常の保険証に代えて「資格証明書」を発行することを定めています。通常、医療機関の受診時に窓口では1割または3割の医療費を負担するところ、資格証明書では医療費の10割を窓口で支払い、後日に役所から通常の負担との差額分を返金してもらうことになります。
資格証明書での受診は、過酷な負担を強いるため、患者さんにも医療機関にも取り扱いに困るものです。また、過酷な負担のため、受診を敬遠し重症化してしまうなど重大な問題があります。すでに国民健康保険制度で資格証明書を発行された方が受診の手遅れで重症化している事例が報告されています。
保険料を納付しないのだから仕方がないという考え方もありますが、保険料負担が所得の少ない方などには重くのしかかり、生活が苦しくて払いたくても払えずに滞納してしまうケースもあります。
「資格証明書」“予備軍”
そうしたことから、奈良県保険医協会では「資格証明書」の“予備軍”ともいえる保険料の未納者数の状況を調べました。奈良県後期高齢者医療広域連合に問い合わせて1月下旬、昨年2008年7月~10月までの納付状況を示す文書の開示を受けました。
普通徴収対象者に占める未納者の割合は昨年7月~9月は10%以下ですが、10月は17.1%でした(表参照)。
※ 表は広域連合の行政文書にもとづくほか、一部は独自に個別の自治体に照会した結果も加味して作成したものです。
広域連合によると、昨年10月に新たに徴収対象者になった方が多いことや徴収事務の関係で挙がっている数字がすべて未納者=滞納者とは限らないということですが、未納のままとなる方が残る恐れがあります。特に7~9月分は徴収事務の諸事情を考慮しても、12月時点でおしなべて9%前後とほぼ同一水準であり、今後この未納割合が大きく改善するのか疑問です。「資格証明書」の“予備軍”となる可能性があります。
厚労省が実態を明らかにすべき
奈良県だけでなく、全国的に同様の問題が懸念されています。本来、厚生労働省がこうした現状も把握して広く国民に知らせるべきです。そして、「資格証明書」という形で保険証のとりあげをおこなうのではなく、ていねいに現場で対応できるようにすべきです。
根本には、高齢者に対する過酷な保険料負担と滞納で保険証取り上げという、後期高齢者医療制度導入以前にはなかった仕組みそのものの問題と言えます。
註:
◎ 全国の状況は、保団連が各協会を通じて実施した調査にもとづいて発表しています(「後期高齢者医療の滞納者数調査結果について」を参照)。同調査で奈良県においては、当会が徴収事務を担う市町村担当課へアンケート調査を行いました。しかし、回答した自治体が約半数に留まるなど不十分な結果であったため、このほど改めて上記のように広域連合に照会して行政文書を入手して検討しました。保団連の調査結果は、奈良県分は市町村向けアンケート結果のみにもとづいているため、上記とは一致せず不完全なものです。保団連の発表資料には明記されています。
◎ (2月12日追記)当初、本項の冒頭に掲載している表の数値に一部誤りがありました。訂正しました。
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