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【第70回】職員定着のために―年次有給休暇の環境整備をすすめましょう

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第70回】職員定着のために―年次有給休暇の環境整備をすすめましょう

法改正の目指すものは

 「年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合(※)」「使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合」「労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合(※)」等に違反した場合に30万円以下の罰金となっています。

(※)罰則による違反は、対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われますが、労働基準監督署の監督指導においては、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。(厚労省パンフレットより)

 もちろん法令は厳守することは当然です。これはあくまでも最低限の基準です。年次有給休暇は、働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっていることから今般の改正が行われました。

3つの方法での取得促進

①職員自ら請求・取得
②労使協定による計画年休
③使用者による時季指定

 既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している職員に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできないことになっています。
 上記の①で5日以上取得する環境整備が職員の定着に効果的だと思います。ただ職員のなかに、取得を促しても請求しない者がいる場合は②や③の方法をそれぞれの医院にあった方法で具体化していくことが必要になると思います。
 「半日単位の付与」「病気等やむを得ない理由による事後の請求」「雇用調整もかねた計画年休」「院長の思いやり、気づかい」等で5日以上の取得が、ごく自然にできている医院では、職員の定着もいいと思います。

よくあるご質問

Q 前年度からの繰り越し分の年次有給休暇を取得した場合には、その日数分を使用者が時季を指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することはできるか。
A 労働者が実際に取得した年次有給休暇が前年度からの繰り越し分の年次有給休暇であるか当年度の基準日に付与された年次有給休暇であるかについては問わないものであり、ご質問のような取扱いも可能です。

Q 医院独自の法定外の有給の特別休暇を設けている場合には、その取得日数を5日から控除することができるか。
A 特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすることなく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要があります。

Q 時季指定するだけでは足りず、実際に取得させることまで必要か。
A 使用者が5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に年次有給休暇を5日取得していなければ、法違反として取り扱われることになります。

 参考 厚生労働省発行リーフレットより


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