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【第51回】退職する職員から賃金を請求された場合、規定の支払い日に支払えばよいか

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第51回】退職する職員から賃金を請求された場合、規定の支払い日に支払えばよいか


 当院では、毎月の賃金に関しては「15日締め28日払い」となっています。先日15日に退職する職員が「今月分の賃金を28日の給与振込みを待たずにすぐ振り込んでほしい」といってきました。給与規程を理由に28日に振り込んでもよいでしょうか。


 退職者から請求があった場合は、7日以内に支払う必要があります。

◇賃金について

 労基法24条は、賃金について、臨時に支払われる賃金、賞与等を除いて、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないことを定めています。この規定する範囲内で定められている支払日が到来するまでは、これを支払わなくても、通常の場合には使用者は履行遅滞の責に問われません。
 しかしながら、例外として労基法23条は、職員の退職時に職員から請求があった場合においては、請求があった日から7日以内に賃金を支払わなければならないと定めています。本条は、職員の生活保護や使用者による職員の足留策の防止の見地から定められたものです。
 仮に給与規程等に別の定めがあった場合においても、強行法規たる本条の規定により請求があった日から7日以内に賃金を支払わなければならないことになります。

◇退職金について

 退職金については、通常の賃金と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りるものとされています。


 職員の出産、疾病、災害等の不時の出費を必要とする事情が生じた場合においては、職員から請求があったときは、支払期日前であっても賃金を支払わなければならないでしょうか。


 支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければなりません

◇非常時払いの対象は

  1. 職員の出産、疾病または災害の場合
  2. 職員の収入によって生計を維持する者の出産、疾病または災害の場合
  3. 職員またはその収入によって生計を維持する者の結婚または死亡の場合
  4. 職員またはその収入によって生計を維持する者のやむを得ない事由による一週間以上の帰郷の場合

◇既往の労働に対する賃金とは

 職員が支払期日前の支払を請求することができ、使用者がこれに応じなければならない賃金は、「既往の労働に対する賃金」で、「既往」とは、通常の請求の時以前を指しますが、職員から特に請求があれば、支払の時以前と解すべきと言えます。
 いずれにしても、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金を支払う義務はありません。

◇何日以内に

 労基法23条と異なり定められていません。非常時払いということの性質上、当然に、請求の趣旨に応じて遅滞なく支払わなければならないと解されます。

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