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【第02回】週3日勤務のパートが1日9時間働いたとき割増賃金は必要か

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第2回】週3日勤務のパートが1日9時間働いたとき割増賃金は必要か

◇法定労働時間と所定労働時間 

 使用者は、職員を無制限に働かせることはできません。労基法第32条では、1週40時間(規模10人未満の医療機関は特例措置で44時間)、1日8時間を超えて労働させることを禁止しています。これを法定労働時間といいます。 

 業務の都合でこれを超えて労働させる場合は、労働基準監督署への手続きが必要です。具体的には、労基法第36条に定める労使による書面協定を結びこれを労働基準監督署長に届け出た上で、その協定の範囲内で行わなければならないことになっています。一方所定労働時間とは、各医院において就業規則等で定めた始業時刻から終業時刻(休憩時間を除く)までの時間をいい、変形労働時間制を採用している場合を除き、法定労働時間の範囲内で定めなければならないことになっています。 

◇割増賃金の対象となる時間外労働時間は 

 変形労働時間制を採用している事業場を除き、法定労働時間を超える時間が時間外労働時間となり、1日では実働八時間を超えた部分が割増賃金の対象となる労働時間となります。 

 例えば、所定労働日が週3日、所定労働時間が1日6時間のパート職員が、レセプト業務で3時間残業しその日の労働時間がたまたま9時間となった場合、一週間では法定労働時間内なので割増賃金の支払いは必要ないではなく、この場合は一時間分の割増賃金が必要となります。労基法の労働時間の規制は週および日ごとにかかっています。 

◇法定内残業は

 1日所定労働時間が3時間のパート職員が1時間残業した場合ですが、労基法で割増賃金の支払いを義務づけているのは、法定労働時間を超える労働時間であって、法定内残業についてまでその支払いを義務づけていません。割増賃金を支払うかどうかは、就業規則等で定めることになります。当然ですが、通常の時間給は支払う必要がありますので注意してください。 

◇心掛けたい所定時間外労働に対する配慮 

 パートを希望する職員は、労働時間に対する制限がある場合がありますので、採用の際に、所定労働時間を超えることがあるのか、あるなら月・週何時間ぐらいか、超過勤務は何時間程度まで可能か、などよく確認しておくこと。また可能なら残業は常勤者を中心に行い、パート職員は所定労働時間で終了する配慮も無理のない安定した雇用関係を維持するために必要なことと思います。

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