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【第63回】年次有給休暇の取得ルール~制限はどの程度可能か

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第63回】年次有給休暇の取得ルール~制限はどの程度可能か

年次有給休暇付与の取得ルール

  1. ①労働義務のない日に取得することはできない
  2. ②年次有給休暇の付与は労働日単位が原則(使用者には労働者からの半日休暇の請求に応じる義務はないが、労使の合意で半日休暇も可能)
  3. ③休暇の利用目的は労働者の自由(使用者は、取得目的を理由に付与を拒否できない)
  4. ④年次有給休暇の時季指定は、使用者が時季変更権を行使できる余裕をもって行う

使用者の時季変更権
「事業の正常な運営を妨げる場合」とはどんな場合か

 年次有給休暇の権利の行使と事業運営との調整を図るため、職員が指定した時季に年次有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合には、院長は、その時季を変更することが認められています。

 ここでいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断ですが、行政解釈では「事業の正常な運営を妨げる場合とは、個別的、具体的に客観的に判断されるべきものである」と述べています。

代替要員の確保が困難であることも

 最高裁は、「使用者としての通常の配慮をすれば、代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしなかった結果、代替勤務者が配置されなかったときは、必要配置人員を欠くことをもって事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない」としています。

 よって、恒常的な職員不足を理由として時季変更権を行使したとしても、それが正当と判断される可能性は低いものといえます。

 長期かつ連続の時季指定をした場合には、「…右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時季、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とする最高裁判決があります。

受付3人が同じ日に請求してきた場合

 最高裁判例では、時季変更権行使の適否の判断基準について、「事業の規模・内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきである」としています。したがって、同一期間に多数の職員が年次有給休暇を請求したためにその全員に年次有給休暇を与えることができないということが客観的に認められれば時季変更権の行使は可能です。

 時季変更権の行使を3人のうち1人についてだけ行使する場合、責任と権限が全く同じ場合には「格別の定めのない場合、違法な差別的取扱いまたは権利の濫用にわたらない限り、使用者の裁量に属すると解され」ます。

 いずれにしろ、年次有給休暇を請求してきた3人にも事情があると考えられるので、この3人と十分に話し合ったうえで決定すべきでしょう。

年次有給休暇の申請は3日前までとして問題ないか

 年次有給休暇の請求(時季指定)手続きについては、労基法に別段の定めがあるわけではありません。したがって、労基法第39条の趣旨を損なわない範囲内で各医院の状況に応じてそれぞれ任意に一定の手続きを設けてください。ただし、職員が年次有給休暇の時季を指定する時期の制約については、院長が時季変更権を行使できるか否かを判断できる最小限度の時間でなければならないとされています。

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