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【第56回】年次有給休暇の分割付与、半日取得後の出勤は

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第56回】年次有給休暇の分割付与、半日取得後の出勤は

 今年の4月1日付けで採用した職員に採用時に5日、その6ヵ月後に5日というように年次有給休暇を分割して付与しようと思っていますが問題はありませんか。

 労基法は「使用者は、その雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」(第39条)と定めています。

 初年度の法定の付与日数を一括して付与するのでなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与する分割付与については、次の要件を満たすものに限って差し支えないものとするとされています。

①分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。

②次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じか又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。

 例えば、今年の採用時に5日、10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来平成28年10月1日であるが、10日のうち5日分について6ヵ月繰り上げたことから、同様に6ヵ月繰り上げ、平成28年4月1日に11日付与する方法などが考えられます。

 初年度に温情で行ったことでも、次年度まで拘束されます。

 半日の年次有給休暇を取得し、午後から出勤した場合、残業させることは可能でしょうか。その場合の賃金はどうなりますか。

○半日単位の年休の取得について

 年次有給休暇は「日」が最低単位とされていますが、通達で「法39条に規定する年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない」という逆説的ないい方で、半日単位の付与を認めています。

○午後の労働について

 労働者の要望に応じて午前中の年休を付与した時点で半日年休付与は完成しています。

 午後の労働時間数、午後の所定終業時刻後に所定外労働を行わせることは可能です。

○割増賃金の支払は必要か

 実労働時間主義をとっており、その労働者の1日の実際の労働時間が8時間を超えない限り割増賃金を支払う必要はありません。

 時間外労働に対する割増賃金は、法定労働時間制の原則を確保するための1つの支柱であり、実際に長時間の労働に従事した場合に、その長時間の労働に対する労働者への補償として、支払いが義務づけられているものです。

 もちろん、割増賃金の支払いは不要ですが、何も支払う必要がないということではありません。時間給千円で2時間所定外労働を行えば2千円の支払いが必要です。

 就業規則において「午後6時以降の勤務について割増賃金を支払う」というような定めがあれば、この定めに従う必要があります。

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