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【第65回】パート職員への賞与はどうしたらいいか、支給する必要はあるか

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第65回】パート職員への賞与はどうしたらいいか、支給する必要はあるか

◇法律上の支給義務はない

 パート職員だけではなく正職員についても、退職手当や賞与の支給については法律上の義務はなく、支給額や支給方法、支給日、支給対象者については、原則として医院が自由に決めることができます。

◇パート職員に明示することが義務付けられている「賞与」「昇給」「退職手当」の有無

 労働基準法では、パート職員を含めて、職員と労働契約の締結に際して、労働条件を明示することが事業主に義務付けられています。特に、「契約期間」「始業・終業の時刻や所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日・休暇」「賃金」などについては文書で明示することが義務付けられています。
 これに加えて、パート労働法では、特にトラブルになりやすい「賞与の有無」「昇給の有無」「退職手当の有無」の3つの事項について、文書の交付などにより、速やかに、パート職員に明示することが義務付けられています。

*「昇給」とは…1つの契約期間の中での賃金の増額をいいます。
*「雇い入れたとき」とは…初めて雇い入れたときのみならず、労働契約の更新時も含みます。

◇正職員と均衡のとれた待遇を

 賞与、退職手当についても、パート労働法に基づき、パート職員の就業の実態に応じて正職員との均衡を図ることが求められています。
 「職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験、責任等」のうち、どの要素を勘案するかについては、基本的に事業主の裁量となりますが、パート労働法により義務付けられる待遇の決定理由に関する説明が可能であるような、合理的なものとしておくことが求められます。

◇やる気を引き出すためにも

 パート職員にとって、賞与、昇給、退職手当が「あるかないか」、事業主が思っている以上に関心が高いように思います。
 「やっている仕事内容は同じ、能力も経験も昨年採用された正職員よりも…」のような場合、週所定労働時間が40時間の正職員には20万円支給されたのに、週所定労働時間が20時間だけを理由に賞与なしでは納得できないように思います。

◇賞与はこれまで夏1・5ヶ月、冬2ヶ月だったが、減らしてもいいか?

 労働条件通知書(雇用契約書)の定めによります。「夏1・5ヶ月、冬2ヶ月支給する」と明記すると、原則義務となります。
 「なし」とすると、やる気をなくすでしょうし、退職につながる可能性もあります。どのような明示が小規模事業所である医院に合っているでしょうか。

【参考例】

賞与
 賞与は毎年7月及び12月に支給する。ただし、医院の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は支給日を延期することがある。
(対象者)支給日に在籍している職員を対象とする。ただし、採用6月未満の職員は対象としない。
(賞与の額)賞与の額は医院の業績及び職員の勤務成績などを考慮して各人別に決定する。ただし医院の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には支給しないこともある。
昇給
 昇給は毎年7月に行う。ただし、採用から1年未満の者は対象としない。
(昇給額)医院の業績と職員の勤務成績を考慮し、公平に決定する。ただし、医院の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は昇給しないことがある。
退職手当
 勤続3年を超える者に支給する。(詳細は退職規程による)

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