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【第33回】期間の定めのない契約を有期労働契約に変更したいが

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第33回】期間の定めのない契約を有期労働契約に変更したいが

 医院経営も厳しさを増しており、とても不安です。現在期間の定めのない労働契約を締結している労働者について、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)に変更することは可能でしょうか。

A
 労働条件の一方的な不利益変更は可能か

 やむを得ない理由があっても、その実施について、労基法で定められた規制や手続き等を遵守することは最低限必要なことですが、違反しなければなんでも自由に行い得るものではありません。労働条件に関する不利益な変更については、一般的な状況が総合的に判断され、高度の必要性に基づく合理性の有無が決定されます。代表的な裁判例を参考にしたいと思います。

(1)労働者の同意を得ることなく、賃金の一方的減額を無効とした例
  労働契約において賃金は最も重要な労働条件としての契約要素であることはいうまでもなく、これを従業員の同意を得ることなく、一方的に不利益に変更することはできないというべきである。(東京地裁 平成三年(ワ)第六八七三号 平成6年9月14日判決等)

(2)就業規則の不利益変更が無効とされた例
  不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済がないまま不利益のみを受忍させることは相当性がなく、また変更に同意しない者に対し法的に受忍させることも、やむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると、いうことはできないとして無効とされた。(最高裁第一小法廷 平成八年(オ)第一六七七号 平成12年9月7日判決)

◇労働契約変更に際しては、労使当事者間の合意が必要

 平成15年の労基法改正の主要内容に有期雇用契約の期間の上限(原則1年から3年に、特例は5年に)と有期雇用契約の更新・雇止めのルールがありますが、そのとき改正の趣旨として、今回の法改正を契機として「使用者が労働者との間に期間の定めのない労働契約を締結している場合において、当該労働者との間の合意なく当該契約を有期労働契約に変更することはできない」ことが強調されました。期間の定めのない労働者を有期雇用労働者に変更する場合は、労働者本人との合意が必要です。

◇労使の信頼関係を損ねることなく

 有期労働契約を結ぶ場合、契約期間を必ず3年にする必要はありません。医院の方針に従って、原則3年を超えないなら、その長短は労使間において選択できます。
  使用者として配慮したいのは、一方的な押し付けによって、労働者の生活不安を招き、勤労意欲をなくすことです。それは医院の活力低下となっていきます。安易なやり方でなく、誠実に、信頼関係を何よりも大切に対応してください。

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