【第26回】変形労働時間制と残業手当
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【第26回】変形労働時間制と残業手当
Q
3月までは、1日8時間、週40時間の所定労働時間を設定していましたが、周辺の歯科医院の所定労働時間を調査し、診療時間を延長することにしました。職員との雇用契約も四月から所定労働時間を1日1時間延長し、1日9時間で週40時間の所定労働時間に変更しました。
このとき、月の総労働時間の合計が月171時間を超過したときから割増賃金を支払っていますが、間違いありませんか。
A ◇1カ月単位の変形労働時間制とは
労基法は、労働時間を全ての週について40時間以内、かつ、全ての1日について8時間以内とする原則を定めています。(特例措置により規模10人未満の医院については、1週44時間、1日8時間)
しかし、患者さんの要望や経営上の理由、職員の採用人数や希望などから1日の所定労働時間が8時間を超える設定にしたほうがよい場合もあります。
一定の職員数が確保されているところでは時差出勤(遅出出勤、早上がり)で8時間を超えない設定が可能ですが、1カ月単位の変形労働時間制の導入の方法もあります。
1カ月単位の変形労働時間制は、1カ月以内の一定期間(変形期間)を平均して1週間当たり40時間を超えない範囲で、労使協定又は就業規則その他これに準じるものにより各労働日の労働時間を具体的に定める制度です。
この制度では、具体的に定めた各労働日の労働時間が、特定の週に40時間を超え、ある特定の1日に8時間を超えても、原則として時間外労働とされません。
◇1カ月単位の変形労働時間制で時間外労働となるのは?
時間外労働となる時間は次のとおりです。
①1日については、就業規則等により1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は1日8時間を超えて労働した時間。1日9時間の所定労働時間を設定している日は、9時間を超えて労働した時間から時間外労働になりますので間違いのないように。
②1週間については、就業規則等により、週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間。(①で時間外労働となる時間は除く)
③変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を(法定労働時間が40時間の医院では、1カ月単位の場合は30日の月は171.4時間、31日の月は171.1時間)を超えて労働した時間。(①又は②で時間外労働となる時間は除く)
変形期間の総労働時間のみで時間外労働を計算するのは間違いです。
◇導入のための条件は
1カ月単位の変形労働時間制を導入するためには、就業規則等により変形期間、変形期間における各日、各週の労働時間、労使の書面による協定等が必要ですので、所轄労働基準監督署に相談してください。
◇求人のアピール内容として、「2週間で5日の休日」をキャッチコピーに
1日所定労働時間を8時間50分と設定すると、2週間単位の変形で9日間勤務したときは、週平均39時間45分となります。通勤時間への配慮や職員の希望も聞くことが前提になりますが、2週間で5日間の休日を歓迎する若者への強烈なアピールとなります。
開業医の雇用管理ワンポイント
- 2022年7月14日【第84回】年次有給休暇の年5日の時季指定義務(2022年7月)
- 2022年6月29日【第83回】退職金は必ず支給しなければなりませんか(2022年6月)
- 2022年5月10日【第82回】労働基準法は強行規定です(2022年5月)
- 【第81回】短時間職員から厚生年金保険・健康保険に加入したいとの要望:優秀な看護師の定着・確保のために―労使の合意があれば加入可能(2022年4月)
- 2021年10月14日【第80回】均等均衡待遇の法改正~どんな働き方でも納得できる待遇のルール〈後編〉(2021年7月)
- 2021年7月2日【第79回】均等均衡待遇の法改正~どんな働き方でも納得できる待遇のルール〈中編〉(2021年6月)
- 【第78回】均等均衡待遇の法改正~どんな働き方でも納得できる待遇のルール〈前編〉(2021年5月)
- 【第77回】パワーハラスメント、こんなところに(2021年4月)
- 【第76回】パワーハラスメント対策の法制化(2020年7月)
- 2020年5月7日【第75回】時間単位年休は、義務付けられている年5日の年休取得の対象とならない
- 【第61回】兼業(二重就職)の申出は認めなければいけないか
- 【第62回】「悪い噂」を理由として内定を取り消すことはできるか
- 【第63回】年次有給休暇の取得ルール~制限はどの程度可能か
- 【第64回】65歳まで雇用しなければならないか
- 【第65回】パート職員への賞与はどうしたらいいか、支給する必要はあるか
- 【第66回】病欠した場合、皆勤手当を削る以外に基本給は減らせるか、月給制です
- 【第67回】妊娠中の職員から軽易な業務に転換を請求がされたが
- 【第68回】職員の健康診断
- 【第69回】有給休暇年5日取得義務パート職員も対象か
- 【第70回】職員定着のために―年次有給休暇の環境整備をすすめましょう
- 【第71回】職員間(正職員と2名のパート職員)のトラブル その原因と対策は
- 【第72回】自然災害と安全配慮義務
- 【第73回】パート職員の年休5日の義務化と取得促進・定着について
- 【第74回】年休の発生要件である全労働日の8割以上出勤、育休復帰職員は?
- 【第43回】昇給はしなければならないか
- 【第59回】「休暇の取りやすさ」重視
- 【第44回】大切な院内研修会の日に年休取得を強行
- 【第60回】就業規則は変更できるのですか 同意がなければ変更できませんか
- 【第45回】始末書は強要できるか
- 【第46回】残業手当の定額払はいけないのですか?
- 【第47回】ノーワーク・ノーペイの原則とは
- 【第48回】「年次有給休暇は次年度に繰り越すことはできない」の規則は無効
- 【第49回】採用前の研修を行った場合、賃金の支払いは必要ですか
- 【第50回】タイムカードは何年間保存しなければならないか
- 【第51回】退職する職員から賃金を請求された場合、規定の支払い日に支払えばよいか
- 【第52回】成果主義賃金制度は必要か
- 【第53回】タイムカードでのトラブル防止
- 【第54回】給与の口座振込手数料は職員の負担にできるか、また振り込み先銀行を指定したいが一方的にできるか
- 【第55回】割増賃金の計算間違っていませんか
- 【第56回】年次有給休暇の分割付与、半日取得後の出勤は
- 【第41回】9月17日の祝日に診療、職員から代わりの休日を請求されているが
- 【第57回】勤務する曜日や勤務時間を変更する場合の留意点は
- 【第42回】賞与の支給額を下げても問題ありませんか
- 【第58回】定着率向上のために休日の設定はどうされていますか
- 【第27回】研修会にも時間外手当は必要ですか
- 【第28回】産前産後休業後に復帰した職員の昇給、賞与について
- 【第29回】改築等で一定期間休診するときの休業手当とは
- 【第30回】賞与支給の時期だが
- 【第31回】時間給のパート職員から月給制への変更を申し出られた
- 【第32回】職員の二重就労、辞めさせることは可能か
- 【第33回】期間の定めのない契約を有期労働契約に変更したいが
- 【第34回】個人事業所で職員が5人以上になったときの社会保険適用について
- 【第35回】募集の内容と採用時の労働契約の不一致は許されるか
- 【第36回】昼休みに帰宅して食事をとる職員いるが、途中で事故に遭った場合は
- 【第21回】割増賃金
- 【第37回】採用内定とその取消し
- 【第22回】必ず退職金は支給しなければならないか(前半)
- 【第38回】退職後や休日に年休は請求できるか
- 【第23回】必ず退職金は支給しなければならないか(後半)
- 【第39回】試用期間中の雇用管理のあり方
- 【第24回】労働時間とは
- 【第40回】始業時刻より早く出勤するように指示できるか
- 【第25回】労働時間を適切に管理する責務があります
- 【第26回】変形労働時間制と残業手当
- 【第11回】離職理由を「解雇にしてほしい」と言ってきたが
- 【第12回】年次有給休暇を買上げてもよいか
- 【第13回】年次有給休暇を半日単位で与えられるか
- 【第14回】パートの年次有給休暇
- 【第15回】年次有給休暇①
- 【第16回】年次有給休暇②
- 【第01回】賃金の欠勤カット、一般的な方法は
- 【第17回】休憩時間の長さ
- 【第02回】週3日勤務のパートが1日9時間働いたとき割増賃金は必要か
- 【第18回】健康診断の実施は使用者の履行義務
- 【第3回】使用者には、労働条件の明示義務がありますよ
- 【第19回】賃金の支払い
- 【第4回】週休2日で1日休日労働したときの割増賃金は
- 【第20回】給与の支給日が休日の場合は後日にできるか
- 【第05回】給与計算の過不足と過払いの調整方法
- 【第06回】「頑張ってよかった」と思える賞与支給を
- 【第07回】通勤
- 【第08回】遅刻3回で1日分の賃金をカットできるか
- 【第09回】休憩時間の電話当番を強制できるか
- 【第10回】パートでも雇用保険に加入する義務があるのか
さらに過去の記事を表示