【第18回】健康診断の実施は使用者の履行義務
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【第18回】健康診断の実施は使用者の履行義務
◇安全配慮義務を具体化した労働安全衛生法
労働安全衛生法(以下安衛法という)は1972年に労働基準法から独立し、別規程になった法律です。この法律は、労働契約上事業者が守るべき安全衛生の最低基準を定め、事業者が、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない責務を課しています。労基法とともに、安衛法にも十分注意が必要です。
◇電通判決から何を学ぶか
電通・過労自殺事件では、最高裁は「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めることを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」との判決(2000年3月)を下しました。安全配慮義務を怠った電通は、企業責任として1億6800万円の損害賠償を支払いました。
最近では安全配慮義務違反による損害賠償責任を認める裁判例が多く見られるようになっていますが、企業が安全配慮義務を尽くすためには、予防責任、社会通念上相当とされる防止手段を尽くすこと、危険回避のための予防措置を万全に講じることが求められます。当然ですが、安衛法を遵守することはその前提になります。
◇健康診断の重要性
定期健康診断の実施と診断結果の通知は職員の健康を考えるうえで基本となるものです。雇入れ時の健康診断等の結果を基礎として、労働者の健康状態の推移を把握し、潜在する疾病を早期に発見するため、事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を行わなければならないことになっています。具体的な診断項目も安衛規則に定められています。
また、一般健康診断の結果については、受けた労働者に対し、遅滞なく、その健康診断の結果を通知しなければならないとされています。この通知の義務については、労働者自らが健康管理を行ううえでの基礎となる措置であること等から、罰則を課すこととされています。
◇パートタイマーの労働者に対しては
次のイおよびロの2つの要件を満たす者は、義務があります。
イ、期間を定めずに雇用されていること(契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者は含みます)
ロ、1週間の労働時間数が同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
なお、これらの要件を満たさない者であっても、概ね2分の1以上である者に対しては、健康診断を実施することが望ましいとされています。
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