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【第84回】年次有給休暇の年5日の時季指定義務(2022年7月)

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第84回】年次有給休暇の年5日の時季指定義務(2022年7月)

 職員ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させることが必要なことは理解していますが、ためらいや配慮等の理由で請求しない職員がいます。アドバイスをお願いします。

原則: 職員の申し出による取得

 職員が使用者に取得時季を申し出。

2019.4 新設: 使用者に年休5日の時季指定義務

1.使用者が職員に取得時季の意見を聴取

2.職員の意見を尊重し、使用者が取得時季を指定

3.4月1日入職の場合

 たとえば、4月1日入職の場合、10月1日(基準日)に10日付与。10月1日~翌9月30日までの一年間に5日、取得時季を指定しなければなりません。

4.取得済みの職員には使用者による時季指定は不要

 年次有給休暇を5日以上取得済みの職員に対しては、使用者による時季指定は不要です。
 職員が自ら申し出て取得した日数や、労使協定で取得時季を定めて与えた日数(計画的付与)については、5日から控除することができます。

(例)
 職員が自ら5日取得した場合 ⇒ 使用者の時季指定は不要
 職員が自ら3日取得+計画的付与2日の場合 ⇒ 使用者の時季指定は不要
 職員が自ら3日取得した場合 ⇒ 使用者は2日を時季指定
 計画的付与で2日取得した場合 ⇒ 使用者は3日を時季指定

つまり…
・「使用者による時季指定」、「職員自らの請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で職員に年5日以上の年次有給休暇を取得させれば足りる。
・これらいずれかの方法で取得させた年次有給休暇の合計が5日に達した時点で、使用者からの時季指定をする必要はなく、また、することもできない。
…ということです。

Q1 法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働日について、使用者が年次有給休暇として時季指定することはできますか?
A1 このような手法は、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましくないものです。法改正の趣旨に沿わないものです。

Q2 時間単位での年休取得分は「年5日」の算定には含まれませんね?
A2 この年休時季指定義務に係る「年5日」の算定に際しては、職員が半日単位で年休を取得した日数分については、0.5日としてカウントすることができますが、職員が時間単位で取得した分については、「年5日」の算定には含まれないとされています。(平30.2.28 基発1228第15号)

就業規則に記載を

 時季指定をする場合には、就業規則に以下2点の記載が必要です。
① 時季指定の対象となる職員の範囲
② 時季指定の方法等

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