【第82回】労働基準法は強行規定です(2022年5月)
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【第82回】労働基準法は強行規定です(2022年5月)
合意したら割増賃金は支払わなくて問題ない?
1月に採用した職員、3カ月たっても向上がありません。「シフトでコンビを組むのは嫌だ」「こんな職員をなぜ採用したか」など他の職員から苦情、不満がでています。いいところを見つけて、徐々に成長するよう援助、教育していくつもりです。最近、仕事の要領が悪いので、受付業務のときなど、他の職員より30分以上業務の終了が遅くなっていますが、その職員が「遅いのは私の責任なので、割増賃金はいりません」と言ってきました。合意した場合は割増賃金は支払わなくて問題ないですか。
◆労基法に定める基準に満たない契約は
「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」(労基法第13条)
本法の強行法規性を明文で宣言し、本法に違反する労働契約中法定基準に達しない労働条件を定めている部分のみを無効としたものです。したがって、その無効とされる部分が労働契約の主たる内容であり、その部分が無効とされることによって労働契約を存続させる意義がなくなるような場合であっても、民法の一般原則と異なり、法定基準に達しない部分のみを無効とし、残りの部分はこれを有効とする主旨です。
例えば…例1 | 年次有給休暇は試用期間が終了した日から起算して6ヶ月目から与える。 | → | 法第39条により、「年次有給休暇は6ヶ月経過から与える」に自動修正されます。 |
例2 | 契約期間の途中で退職したら罰金。 | → | 法第16条により、労働契約の不履行についての違約金の定めは無効です。 |
例3 | 会社に損害を与えたら○○円を支払う。 | → | 法第16条により、損害賠償額を予定する契約は無効です。 |
例4 | 業務上災害により休業する者は、休業期間が1ヶ月を超えたら解雇する。 | → | 法第19条により、業務上の負傷または疾病による療養のための休業期間とその後30日間は、解雇できません。 |
例5 | 賃金の支払い日は毎月第4週目の金曜日とする。 | → | 法第24条により、賃金は一定の期日を定めて支払わなければなりません。 |
◆無効となった部分は、この法律で定める基準になる
労働契約中法定基準に達しないため無効とされた部分について、法定基準に置き換えて補充することを明らかにしたものです。例えば、8時間を超えて労働させた場合について割増賃金を支給しない旨の契約は、その部分について無効となり、使用者は、法定の2割5分増しの割増賃金を支払うべき民事上の責を負うことになります。
●罰則●
労基法37条に違反して割増賃金を支払わない場合
6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(法第119条第1号)。
なお、本条は強行規定のため、たとえ労使の合意があった場合でも使用者は罰せられる。
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