【第78回】均等均衡待遇の法改正~どんな働き方でも納得できる待遇のルール〈前編〉(2021年5月)
ここに掲載した記事は、掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【第78回】均等均衡待遇の法改正~どんな働き方でも納得できる待遇のルール〈前編〉(2021年5月)
働き方改革関連法の「同一労働同一賃金」関係の改正法が、事業主に求めていることとは
(1) 同じ企業で働く正社員とパート・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることを禁止。
(2) 事業主の、パート・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などをについて説明を求められた場合の説明義務。
*「同一労働同一賃金」と呼ばれていますが、厳密に言えば文字通りの同一労働同一賃金を求めるのでなく、不合理な待遇差や差別的取扱いを解消することを目指すものです。
■不合理な差がないか
(1)差別的取扱いの禁止(均等待遇)法9条
①職務内容(業務内容及び責任の程度)
*責任の程度とは権限や苦情対応・ノルマの程度
②職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合、待遇について差別的取扱いをしてはならない。
(2)不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)法8条
①職務内容(業務内容及び責任の程度)
②職務内容・配置の変更の範囲
③その他の事情(合理的な労使慣行など)の違いに応じた範囲内で待遇を決定すること。
対象となる「待遇」
「待遇」には、基本的に、すべての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等のすべての待遇が含まれます。一方、パート・有期雇用労働者を定義づけるものである労働時間及び労働契約の期間については、ここにいう「待遇」には含まれません。
差別的取扱いにならない場合
待遇の取扱いが同じでも、個々の労働者について査定や業績評価等を行うに当たり、意欲、能力、経験、成果等を勘案した結果、個々の労働者の賃金水準に違いが生じることは、客観的かつ公正な査定等が行われている限り問題はありません。
○経営上の理由から整理解雇等を行う場合
労働契約に関する全般にわたり、不合理な差を設けてはいけないとされています。労働時間が短いことのみをもって、労働契約期間の定めがあることのみをもって解雇等することは法8条に違反に該当する可能性が高いと考えられます。
十分な説明、人選の基準の合理性など慎重に検討、正社員に準じた整理解雇手続きが必要です。
■不合理な待遇の相違かどうかは、待遇の個別項目ごとに判断される
通常の労働者とパート・有期雇用労働者との間の待遇差が不合理か否かを判断する場合に、その原則となる考え方及び具体例を示すガイドラインが新たに策定されています。
不合理性の判断がしやすい各種手当
①役職手当(役職の内容に対して支給する手当)
同一の内容の役職には同一の、違いがあれば違いに応じて支給を行わなければならない。
また、役職の内容に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。
【問題とならない例】 同一の役職名であって同一の内容の役職に就くパート・有期雇用労働者労働者に所定労働時間に比例した役職手当を支給している。(例えば、所定労働時間が通常の労働者の半分のパート労働者・有期雇用労働者にあっては、通常の労働者の半分の役職手当)
②時間外労働手当の割増率
通常の労働者の所定労働時間を超えて、通常の労働者と同一の時間外労働を行ったパート・有期雇用労働者には、通常の労働者の所定労働時間を超えた時間につき、通常の労働者と同一の割増率等で、時間外労働に対して支給される手当を支給しなければならない。
例えば、通常の労働者もパート・有期雇用労働者も1日の所定労働時間が7時間であった場合、1日の法定労働時間に達するまでの1時間分の所定外労働時間についての割増率の相違は、不合理と判断されると思います。
③通勤手当
パート・有期雇用労働者にも通常の労働者と同一の通勤手当を支給しなければならない。
これは当然のことです。通勤の実費が異なるはずがないからです。
【問題とならない例】 所定労働日数が多い(例えば、週4日以上)通常の労働者及びパート・有期雇用労働者には、月額の定期券の金額に相当する額を支給しているが、所定労働日数が少ない(例えば、週3日以下)または出勤日数が変動するパート・有期雇用労働者には、日額の交通費に相当する額を支給している。
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