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【第76回】パワーハラスメント対策の法制化(2020年7月)

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第76回】パワーハラスメント対策の法制化(2020年7月)

◇6月1日から労働施策総合推進法に基づき、パワハラ防止措置が義務となりました。
(2022年3月まで中小事業主は努力義務)

 職場におけるパワーハラスメントとは次の3つの要素をすべて満たすものです。
①優越的な関係を背景とした
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
③就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
※適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

優越な関係とは
 パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることで、例えば、以下の場合も含むとされています。
・職務上の地位が上位の者による行為
・同僚または部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの。

◇与える影響は深刻

 職場は、人生の中で多くの時間を過ごす場所、様々な人間関係を取り結ぶ場です。そのような場所でパワーハラスメントを受けると
① 人格や尊厳を傷つけられたり、仕事への意欲や自信をなくし。
② 心の健康の悪化、場合によっては休職や退職に追い込まれたり、苦しみ、最悪の場合は自殺にまで追い込まれることも。
③ 受ける人だけの問題だけでなく、職場全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

◇「思わずやっているこんなこと」はありませんか?

① モンスター院長
 感情にまかせ、大声で怒鳴る
② 公開叱責
 皆の前で人格を否定するような叱責
③ 「無視」の命令
 特定の職員を無視するよう院長が指示
④ 説教電話
 所定労働時間外や休日に携帯電話で仕事の失敗を長時間責める
⑤ 過重なノルマ
 あえて困難な仕事を与え、業績が上がらないことを執拗に責める
⑥ 私的強制動員
 仕事とは無関係なカラオケ等に参加するよう強要
⑦ 聞き流し
 パワハラの相談には親身に真剣に耳を傾けること。それは医院の責任です

◇雇用管理上の措置の具体的内容
(現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて今後検討)

① 事業主によるパワハラ防止の院内方針の明確化と周知・啓発
② 苦情などに対する相談体制の整備
③ 被害を受けた職員へのケアや再発防止
 等

 言動を見つめ直し、働きやすい職場環境を整えるようにしたいものです。それぞれの職場において、心身ともに快適な状態で、その持てる力を存分に発揮できる状況を作り出すようにしましょう。

開業医の雇用管理ワンポイント

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