【第60回】就業規則は変更できるのですか 同意がなければ変更できませんか
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【第60回】就業規則は変更できるのですか 同意がなければ変更できませんか
使用者が、職員にとって労働条件を不利益に変更することは許されるのだろうか。この点について、秋北バス事件(最高裁判決)は、就業規則による定年制の新設が争われた事案について、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。」と判示しています。
◇労働契約法で明文化された原則
○合意があれば変更できる
「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。(第8条)
○就業規則による労働契約の内容の変更
前段 「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」(第9条)
後段 使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要。(第10条)
A その変更が、以下の事情等に照らして合理的であること。
- ①労働者の受ける不利益の程度(従前の労働条件に比べて、どのくらい低下したか。世間相場等との比較においても問題となる。)
- ②労働条件の変更の必要性(特に、賃金・退職金変更の必要性については、「高度の必要性」を要すると解されている。)
- ③変更後の就業規則の内容の相当性(一方的な労働条件の引き下げではなく、関連する労働条件の改善等といった代償措置を講ずることにより、労働者の被る不利益を緩和しているか)
- ④労働組合等との交渉の状況(労働組合が存しない場合には、労働者側への説明会の開催や説明文書の配布、意見聴取の実施等を十分に行ったか否か、その際の説明内容等がどのように行われたか等が問われる。
B 労働者に変更後の就業規則を周知させること
◇就業規則と違う内容の労働契約で合意していたときは
労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合には、その合意していた内容が、労働条件になります。ただし、労働者と使用者が個別に合意していた労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。(第12条)
職員が働いていくなかでは、労働時間や賃金等の労働条件が変わることが少なくありません。労働条件の変更をめぐってトラブルにならないように、労働契約法のポイントを押さえて、院長と職員で十分に話し合うことが大切です。
また使用者が就業規則を机の中にしまっていて、労働者が見たくても見られない場合等は、労働者に周知されていないことから、その就業規則は労働者の労働条件にはなりませんので注意しましょう。
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