【第53回】タイムカードでのトラブル防止
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【第53回】タイムカードでのトラブル防止
◇放置した結果、やる気をなくし大切な職員が退職
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録し、労働時間を適切に管理する責務を有していますが、その方法としてタイムカードの記録をもとに確認し、記録する方法をとっている医院は多いと思います。
「信頼してまかせていた」「業務が忙しくて」など言葉の内容はそれぞれですが、大切な職員から退職願がだされた事例を紹介したいと思います。
ある日突然職員から退職願が出されました。予想もできなかったことなので、その職員から理由を聞くと「先輩の○○さんから月に何回か朝、タイムカードの打刻の依頼を携帯電話で受けてきた。拒否すると一日中機嫌が悪く、ときには業務中に無視・いじめを受けることもあったので、不正と自覚しつついやいや打刻した。それがいやなので退職をするしかないと思った。」とのことでした。
◇不正打刻に対する判例では
「装置はその構造自体も打刻時間の表示そのものは機械装置にゆだねているものの、打刻行為自体の適正の担保については、これを利用し打刻する者自体の良識とモラルにゆだねられているものである…これを利用し打刻することによって自己の出退勤時間の管理を受けるに至った者については、道徳的に他人による不正な代替打刻や打刻後における表示時間の改変の行為が許されない…有用な装置の効用を減殺滅却し、時間管理の体制ないし、制度を破壊するものとして、これがその違法性の程度は極めて高いものといわざるを得ない。」(昭43・9・9 名古屋地裁判決常懐学園事件)とされています。
◇それぞれの医院にあった対応を
タイムカードの打刻を始業と終業時刻だけでなく、昼休憩の開始と終了時刻も行うようにし、労働時間を把握する。またタイムカードの設置もスタッフルームでなく職場入口に変更し、労働時間が正確に反映するように改善する。
またタイムカードの打刻について、別紙のような掲示(内容はそれぞれの医院で異なると思います)を行うこともひとつの方法です。
◇仕事が終わった時刻と打刻時刻に大きな相違がある場合は放置しない
使用者は、労働時間を適切に管理する責務を有しています。タイムカードで労働時間を把握する方法を取っているなら注意してください。打刻された時刻までは仕事をしていたという立証は使用者にあります。
仕事が終了してもすぐに打刻しない職員、帰宅せずおしゃべりをしている職員、翌日にできる仕事でも院長の許可なく自分の都合で残って行う職員がいる場合は放置しないようにしましょう。タイムカード打刻時刻まで残業していたとして主張されることも、退職時等にときどきあります。医院の施設は院長の指示にもとづいて仕事をするところです。業務終了後の管理も怠ることがないようにしましょう。
タイムカード打刻の諸注意
院長 ○○ ○○○
タイムカードで労働時間を確認し、記録する方法をとっています。
これは法定帳簿として大切な書類であり、給与計算のもとにもなっています。
- 始業時刻は、業務を開始できるときに打刻する。
- 終業時刻は、業務が終了した時点で打刻する。
- 休憩時間の開始・終了も上記を厳守する。
- 打刻漏れがあり、後日気がついたときは、その理由と対策をメモし院長に提出する。その後、手書きし、承認の院長印の押印を求める。
- 他人のものは打刻しない。また他人に打刻を求めない。
- 遅刻は所定労働時間の始業時刻を過ぎた時間とする。(分単位で)
- 残業については、院長の指示に従う。
基本姿勢
- 長時間労働は医療サービスの低下、職員の健康と私生活に悪い影響を与えることは必至です。業務の効率化と各職員の能力向上をたえず追及し所定内で勤務が終了するように頑張りましょう。
- スタートの早い職員と遅い職員では、仕事に差がついてきます。予定や段取りを確認し、いつでも仕事にかかれる体制を整える、そうすることで効率的に仕事ができます。ゆとりあるスタートを心がけましょう。
以上
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