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【第45回】始末書は強要できるか

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

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【第45回】始末書は強要できるか


 注意してもまた同じことを繰り返すので、始末書を書くように指示しましたが、拒否します。どうすればいいでしょうか。また始末書を提出しないことをもって、再度処分できますか。

◇強要はできませんので注意してください

  「労働者は使用者から身分的、人格的支配を受けるものではないので、謝罪を強制することはできない」(高松高判昭46・2・25丸住製紙事件)とされています。ですから始末書の不提出をもって再度処分することはできません。

  この場合、報告書やてん末書ならば業務命令としてできます。

◇強要とは

  一般的には長時間であったり、繰り返したり、強く詰問したりすることが該当すると思います。またときたま見かけることですが、使用者が始末書の全文をパソコンで作成し、署名だけ本人がしているケースも注意したいものです。

◇弁解ばかりの始末書はどう扱うか

  弁解ばかりの始末書に対しては、突き返したい気持ちになりますが、「無理やり書かされた」ことへの証拠になることがあります。注意に対して何ら反省しようとしない証拠ともなるでしょう。返す場合でもコピーをとっておくようにしてください。

◇始末書の内容でとくに気をつけることは

  「このたびの一件…」などの文書をときどき見ますが、これではなんのことかわかりません。なによりも事実を正確に押えることが必要です。いつ、どこで、どのようなことを、業務への影響はなどを具体的に記載した上で、その事に対する反省と今後の対策、また作成日も忘れないようにしましょう。

◇なぜ始末書を取るのか、その前に使用者としてやるべき事は

  口頭の注意でも改善されない場合などに提出を求めると思いますが、その主な目的は再発防止と職場の秩序回復にあると思います。感情的になるのでなく、冷静に対応したいものです。当然ですが、どの職員に対しても公正に対応しているかも問われます。

  ある医院の院長先生は就業規則の前文に次のような文を掲載されました。「仕事とは、人生の中で大きな部分を占めるものです。生活の手段としてはもちろんですが、それだけでなく、そこで、自分の能力・適性を発揮し高めていければ、仕事は楽しくなり、人生を充実したものにできます。女性には様々なライフステージがあり、それに合わせて様々な働き方があるのは当然ですが、仕事の場では集中し、努力しましょう。…様々な面でサポートしていきたいと考えています。」

  始末書を安易に乱発するのでなく、その前に方針の徹底、業務に関する教育、援助が十分であったかどうか、自己点検することも大切なことです。

開業医の雇用管理ワンポイント

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