【第42回】賞与の支給額を下げても問題ありませんか
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【第42回】賞与の支給額を下げても問題ありませんか
Q
賞与支給の時期がきました。いままでは、どんなに厳しくても前年度と同じ支給額を維持してきましたが、今年の年末は下げざるを得ない経営状態に陥っています。法律上問題はないでしょうか。また12月20日付けで退職を申し出ている職員がいます。この職員は、11月末から退職日まで年休で1日も出勤しません。在籍条項がありますが不支給にしたいのですが。雇用契約書では賞与に関しては次のように定めています。
①賞与は毎年6月15日と12月15日に支給する。それぞれの算定対象期間は12月1日から5月末、6月1日から11月末とする。
②対象者は支給日に在籍している職員とする。ただし、所定労働時間が週20時間未満および採用6カ月未満の職員は除く。
③賞与の額は、医院の業績及び職員の勤務成績などを勘案して個別に定める。ただし、医院の業績の著しい低下、その他やむを得ない事由があるときは、支給時期を延期し、または支給しないことがある。
◇雇用契約書での定めがポイントになります
月例給与は、一定期日に全額支払うことが労基法で義務付けられていますが、賞与を支給することは、義務付けられていません。しかし、就業規則や労働条件通知書等で、支給額・支給率について具体的に定められている場合には、支払いの義務を負うことになります。経営が厳しいからといって、支給しないことは許されません。
ご質問の場合は、雇用契約書で「賞与の額は、医院の業績及び職員の勤務成績などを勘案して個別に定める。」と記載されているのみで、具体的な支給条件があらかじめ確定されていなければ、労基法上の問題はありません。
「賞与は、夏・冬ともに基本給の2ヶ月分を支給する」との定めがある場合は、義務となりますので、当院の就業規則や雇用契約書の内容を今一度確認してください。
◇年休取得者を在籍していない職員と同様に扱うことはできません
まず就業規則や雇用契約書において、賞与の支給対象者を支給日在職者に限定する規定に問題ないかがポイントになります。
判例では、支給日に在籍しない従業員には賞与を支給しない旨の労使慣行が存在している場合、賞与支給支払い対象期間のすべてを勤務し、当該支給日以前に退職した従業員には、賞与受給権がないとしています。(京都新聞社事件 昭60・11・28)
支給日在籍条項が就業規則に明記されている場合には、もちろん合理性が認められています。(カツデン事件 平8・10・29)、ただし、支給日在籍条項があっても実際の支給日が予定日より遅れた場合は、予定日に在籍していた職員に賞与請求権があるとされています。
年休を取得している場合、労働している実態はないのですが、退職日まで在籍していることに変わりがありませんので、支給する必要があります。
◇十分な説明が必要
労基法上の問題はないといっても、昨年より減額するわけですから、職員の生活に大きな影響を与えることは明らかです。
大変ですが、必要に応じて経営資料も提示しながら十分に説明し、納得が得られるように努力してください。
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