奈良県保険医協会

メニュー

【第37回】採用内定とその取消し

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第37回】採用内定とその取消し


 ある人を縁故関係で絶対に採用しなければならなくなったのですが、すでに採用内定通知を出してしまった他の人の内定取り消しは可能でしょうか?

A
 その手続きや合意の内容によって採用の仕方はさまざまなので、採用内定をめぐる法的な問題について一律に言うことは困難です。

◇労働契約の成立はいつか

 一般的には、企業が採用内定通知を発し、入社誓約書又はこれに類するものを受領した時点において、労働契約が成立したとみられる場合が多いと考えられています。
  また内定者の地位について「就労の有無という違いはあるが、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはないと見るべきである」(最高裁判決)とされています。

◇採用内定がすでに労働契約の成立とみられる場合は

 いまだ労働者が現実に就労していない場合においても、内定を取り消すことは解雇に等しいので、労基法の解雇予告規定の適用があり、30日前に解雇の予告をするか、あるいは30日分以上の解雇予告手当を支払う必要がでてきます。また、内容的にも民法の権利の濫用として無効とならないような社会通念上相当の理由が必要ということになります。

◇相手の身になって、誠意ある対応を

 対応ですが、採用内定といっても、単なる労働契約締結の予約の意思表示とみるのか、労働契約の成立とみるのか、労働契約の成立とみるとしてもどの時点で成立したとみるべきか、その事案ごとの内定通知(手紙、電話、口頭等は問わない)の内容、辞令の交付、誓約書の扱い、慣行などの解釈によって判断することになり、ケースバイケースといえます。
  今回のケースは相手が学校を卒業できなかったとか、破廉恥罪を犯したなどなら採用内定取消しの正当な事由といえますが、相手には問題なく非はこちら側にあるのです。これが新規学卒者なら卒業後の就労を期して、他企業への就職を放棄するのが通例です。縁故関係でお断りができないのなら、少々職員数がオーバーになっても、育成も考慮しながら採用を検討する。できないのなら、事情をすみやかに説明し、謝罪し、納得が得られるように十分話し合って、誠意ある対応をすることが大切です。

開業医の雇用管理ワンポイント

さらに過去の記事を表示