【第19回】賃金の支払い
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【第19回】賃金の支払い
賃金の支払方法の5原則
賃金は労働者の生活の糧であり、労働の対価が完全かつ確実に労働者本人の手に渡るように、労基法は賃金の支払いについて、①通貨払、②直接払、③全額払、④毎月最低一回払、⑤一定期日払―の五原則を定めています。
労働者の子に給与を渡してもよいか
Q
職員が給料日に欠勤、当日の昼ごろ子が受け取りにいくという電話が本人からありました。構わないでしょうか?
A
労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは直接払の原則に違反します。ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えないとなっています。使者は、代理人のように自分自身の判断で行動するのでなく、本人の手足となって動く者ですので、それへの支払いは本人に対する支払いと同視されるからです。 具体的には、その者と生計を一にしている同居の家族(夫、妻あるいは子)が本人の代わりに賃金を受け取りに来るような場合ですが、本人が直接受取りに来られない特別の事情があること、本人の意思に基づいていること(本人の書面を持参するとか本人から医院にその旨電話連絡が入っている場合)が必要であると言えるでしょう。
賃金支払日を変更したいが
Q
給料計算事務が繁忙のため毎月20日を賃金支払日と定めているが25日に変更しても支障ないでしょうか?
A
賃金支払期の間隔が開きすぎることによる労働者の生活上の不安を除くことを目的に「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定しています。この原則が守られていれば問題はありません。所定の手続き(就業規則の変更、届出等)を踏めば法律上は問題ありません。一度特定した支払日を変更できないものではありません。 ただし、賃金の支払日が20日から25日になった月は、前月分でいつもの場合より5日間長く生活しなければなりませんから、余裕を持って、労働者に十分に説明しておくことが必要でしょう。
残業手当のみ後日払いは可能か
Q
各職員の残業手当の計算が間に合わないために、残業手当のみ後日に支払っているが「全額払い」「一定期日払い」の原則に違反するおそれはありませんか?
A
賃金の一部を控除すること、すなわち賃金の一部を、いかなる名目であれ、差し引いて支払うことを禁止しています。賃金の一部を支払保留することによって労働者の足留めをすることを禁ずるとともに、労働の対価が完全に労働者に渡るようにするためです。
このケースの場合、直ちに違法とはいえませんが、例えば就業規則等で賃金締切日毎月20日と支払日毎月25日を決めるとしたとき、これは、通常、残業手当も含めて支払うと解かれます。現在の状態は、就業規則等に違反していることになります。そのための改善の方法として賃金締切日と支払日との間隔をもっと空けて、事務処理に支障がないようにするか、就業規則等で残業手当だけは、別に定めて支払う旨を記載しておく方法があります。
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