奈良県保険医協会

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衆議院解散・総選挙を終えて―医療と社会保障を大切にする政治に

 10月に行われた大義なき衆議院・解散総選挙から1月あまりが経った。安倍首相は「国難突破解散」と臨時国会冒頭のたった一言で解散に踏み切った。これには、自身が追及されていた森友・加計問題をこれ以上長引かせないため、そして野党の選挙準備が万全ではなく、今なら勝てるという思惑があったのだろう。
 選挙の結果は御承知の通りで、自民・公明の与党が3分の2の議席を占める結果となった。民進党は希望の党に合流して事実上の分裂となり、結果失墜した。市民連合を中心とした野党共闘は一部の地域では統一候補として闘ったが、新党が入り乱れ統一候補が出せなかった地域では票が分かれてしまった。
 今回の結果の特徴の1つは自民党が改選前議席を維持し、与党が引き続き3分の2を超える議席を確保したが、必ずしも国民の全面的な信任は得られていないことである。
 選挙戦で安倍首相と与党は「消費税の使途の変更」、「全世代型社会保障」、「憲法改正」など国政の重要課題について十分な説明をせず、「国難突破」、「北朝鮮の脅威」を強調した。投票率が低く、結果として安倍政権の存続を許したことは、政権の「争点隠し」や選挙の争点に切り込まないマスコミの姿勢の影響もあるが、多くの国民にとって関心が薄かったと言わざるを得ない。
 自民党「大勝」という結果は、大政党に有利に民意を歪める小選挙区制度の問題点をあらためて浮き彫りにした。自民党の比例での得票率は33.3%(有権者比の得票率=絶対得票率は17.3%)、小選挙区での得票率は47.8%(同25.0%)であるのに対して、衆議院の議席の61.1%を占めた。小選挙区に限ってみると自民党は289議席中215議席で、議席占有率は74.4%になる。国民の3分の1の支持で3分の2の議席を占有できる選挙制度の問題を改めて考えるべきである。野党共闘の分断は安倍政権を利する結果をもたらしたが、市民と野党の共闘にとって、分断を許さず、結束を維持させる国民世論を作る取り組みを強めるという課題が明らかになった。
 選挙が終わるや否や、選挙期間中は全くと言って良いほど争点にされなかった診療報酬引き下げや患者負担増、所得税増税の話が出されている。現在年末の診療報酬改定率決定に向けた攻防が繰り広げられ、保険医協会・保団連として診療報酬引き上げと患者窓口負担軽減を求める医師・歯科医師連名要請署名にとりくみ更に呼びかけを広げている。今回の署名の呼びかけに応じていただいた会員・県内保険医の方々に感謝申し上げるとともに、今後も医療と社会保障の改善をめざして活動していく所存である。

【奈良保険医新聞第423号(2017年12月15日発行)より】

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