奈良県保険医協会

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介護が益々形骸化しかねない、介護保険改悪を阻止しよう

 介護保険制度は3年に1度、大きな見直しが行われ、次回は2024年4月に予定されている。政府内では、すでに見直しの議論がすすんでいるが、その中身は負担増が目白押しである。特に大きな影響があると見られるのは、「利用者負担の原則2割化」「ケアプランの有料化」「要介護1・2の総合事業への移行」の三大改悪であろう。

 介護保険の利用者負担は制度開始当初、原則1割負担であった。しかし、介護保険の利用がひろがるにつれ「制度の持続可能性」を口実に、負担割合を増やしてきた。所得上位層には、15年に2割負担(単身年収280万円、2人で345万円以上)を、18年に3割負担を導入。そして今、原則2割化や2、3割負担の対象者拡大までねらわれている。また現在、ケアプラン作成は自己負担なしで利用できるが、もし有料化されれば、利用控えの増加や、本当に必要なサービス利用ができなくなると、多数の関係者から懸念の声が上がっている。

 総合事業はすでに要支援1・2の訪問介護、通所介護は移されており、政府は要介護1・2のサービスまで対象をひろげる検討をしている。地域のボランティアなどが担い手となるはずが実際には人が集まらず、地域の介護事業者が指定業者となりサービス提供しているのが実情である。訪問介護は報酬単価が低く、ヘルパー不足や高齢化などの問題もあり総合事業に要介護1、2を移行させる考え方は全く実情に合わない。

 昨年末の厚労省社会保障審議会では結論が先送りされたが、負担増をともなう法律改正をあきらめた訳ではない。短期間で反対署名が多数集まるなど国民の反対運動の広がりや、春の統一地方選への影響を恐れてのことであろう。2000年に「介護の社会化」「自己決定によるサービスの自由な選択」などの聞こえの良いフレーズで開始された介護保険制度であるが、現状は経済的格差がサービス利用の格差となり、低所得者ほど必要なサービスを利用できない仕組みとなっている。自分の生き方や生活を自己決定できない制度は、憲法25条の生存権を保障できておらず、およそ社会保障と呼べる物ではない。

 この23年間、「制度の持続可能性」「重点化」と給付抑制と利用者負担の増加が繰り替えされ公的責任は後退し続ける一方である。政府は「全世代型社会保障」を宣伝し、高齢者と現役世代の対立をあおってきた。高齢者の給付削減は、若年世代の負担を増やし、将来不安を増大させ、結局すべての世代の負担増につながる。若年層の低賃金や非正規雇用、子育て負担の問題を解決し社会保障費の国庫負担を増やさなければ根本的な解決にはならないのではないか。限られた予算編成の中で防衛費の2倍化ではなく、介護保険の負担軽減と介護労働者の低賃金解消と人員配置にこそ予算を使うべきだ。

これまでの介護保険の主な改悪と現在検討中の中身
2000年 介護保険制度スタート
2006年 施設等の部屋代や水光熱費、食事代の全額自己負担化
2012年 第2次阿倍政権発足。「全世代型社会保障」打ち出す。
    社会保障制度改革推進法成立、「自助・共助」「自己責任」強調
2015年 利用料2割負担導入。特養入所を要介護度3以上に制限。要支援1、2の保険外し。
2018年 利用料3割負担導入。
2021年 部屋代や食事代などの自己負担の補助対象外拡大
2024年 利用料1割→2割化へ?
2027年 要介護1・2の介護保険はずし?ケアプラン有料化?
防衛費・5年で43兆円増額

介護利用料無料化 1兆円

ケア労働者200万人の処遇改善 2兆円で可能(全産業平均並みに月8万円の賃上げ)

【奈良保険医新聞第485号(2023年2月15日発行)より】

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