どうなる2018診療報酬改定―現場の実情に沿った診療報酬と社会保障の充実を
診療報酬めぐる攻防
昨年12月診療報酬改定の協議で財務省は全体で「2%半以上のマイナス改定」、本体部分も「マイナス改定」が必要と建議していた。しかし病院全体の利益率がマイナス4.2%の赤字であり医療崩壊が現実味を帯びてきた。また保険医協会などが行った診療報酬本体の大幅引き上げを求める医師・歯科医師要請署名運動などの後押しもあり、政府与党は薬価の引き下げで財源を作り「本体」部分を0.55%引き上げることを決めた。当会でも会員はもちろんのこと未入会の医師・歯科医師にも署名の協力を呼びかけここ数年で最も数多くの現場の声を届けることができた。
改定率が決定し、厚生労働省は本年1月10日、4月に改定する診療報酬の主要項目(表1)を中央保険医療協議会(中医協)に示した。中医協はこれをもとに議論し、2月上旬に改定内容を答申する。以下、骨子案の主な論点を述べる。
- 複数の医療機関が連携し、24時間態勢で訪問診療を実施した場合の報酬を新設
- パソコンやスマートフォンを用いた遠隔診療の報酬を新設
- 看護配置だけでなく、重症患者割合など診療実績に応じた段階的な報酬体系に変更
- 器具の滅菌など院内感染対策を要件の施設基準、満たさないと初診料や再診料を減額
- 大手の門前調剤薬局チェーンや門内薬局の報酬を引き下げ
在宅への誘導
高齢化と人口減少で手術が必要な急性疾患の患者が減り、生活習慣病など慢性疾患を持つ高齢者が増えることを予想して、政府は医療費抑制を考え入院医療から在宅医療へのシフトを進めている。これまでも在宅医療に特化した医療機関の開設を促してきたが「夜間対応できない」などの理由で訪問診療をする診療所は2割にとどまっているため、複数の医療機関が連携し24時間態勢で訪問診療を実施すれば報酬をつけることにした。それが前回改定で新たに新設された「地域包括診療料」「地域包括診療加算」であるが、届出する医療機関が6%代に留まっているため今改定では常勤医師は1名でも可とするなど要件が緩和される見込みである。
入院医療は主に患者7人に対して看護師1人という手厚い看護配置の急性期向け病床を減らすため、重症患者をどれだけ受け入れたかなどの実績を加味し、より段階的な報酬体系にすることが示された。また特定の医療機関の処方箋を主に受け付ける「門前薬局」の調剤報酬は引き下げられる見込みだ。
歯科は初・再診料に差
歯科でも、今次改定の政策意図を反映した在宅や医科歯科連携などの項目で改定事項が並んでいる。そして特筆すべきは、外来の基本診療料(初診・再診)を引き上げるものの、新たな院内感染対策の施設基準要件を設け、これを満たさない医療機関にはその満額の算定を認めず、低い点数にするという前代未聞の懲罰的な点数設定の導入である。加算だった「外来環」と違う、減算とすることの意味は重い。
歯科診療報酬ではこれまでにも、医科ではなしえないような仕組み――成功報酬や、医療機関への一方的な長期にわたる維持管理責任の押しつけなど――が導入され紆余曲折があった。最も基本的な技術料に格差を持ち込む手法は、またその一つの試みといえる。
社会保障の充実が必要
社会保障(医療、介護、福祉、年金)と教育は国の根幹をなす重要な社会基盤である。特に高齢者の健康が維持されなければ介護ならびに福祉の負担が増すことは明らかである。安全、安心の医療を行うためにも、診療報酬の大幅な引き上げと現場の実情にあった診療報酬体系を求めていかなければならない。
主張
- 2023年3月16日当会に未入会の先生方へ:奈良県保険医協会にぜひご入会ください――ともに活動し、明るい未来を切り開きましょう
- 2023年2月22日介護が益々形骸化しかねない、介護保険改悪を阻止しよう
- 2023年1月14日新年のご挨拶
- 2022年12月15日県福祉医療制度をすべて現物給付に
- 2022年11月15日第57回定期総会にご参加ください
- 2022年10月17日防衛費の倍増・強化―自衛隊の質的・量的増強を危惧する
- 2022年9月15日高齢者を標的にした医療費負担増制度は中止を
- 2022年8月17日参議院選挙の結果を受け
- 2022年7月14日マイナンバーカードによる保険証確認の義務化に抗議する
- 2022年6月15日参議院選挙に向けてー医療と暮らし、平和問題など争点に、議論を尽くそう
- 2022年5月14日今こそ憲法を守って平和な日本を
- 2022年4月18日診療報酬改定―保険医の技術料に正当な評価を求める
- 2022年4月7日当会に未入会の先生方へ:奈良県保険医協会にぜひご入会ください――ともに活動し、明るい未来を切り開きましょう
- 2022年2月24日コロナ禍で浮き彫りとなった新自由主義の危うさ
- 2022年1月11日新年のご挨拶
- 2021年12月20日奈良県保険医協会 第56回定期総会 決議
- 2021年12月15日第56回定期総会を迎え、来年に臨むこと
- 2021年11月16日自公政権継続、医療の切り捨て許さぬ運動ますます重要ー総選挙の結果を受けて
- 2021年10月16日コロナ禍と貧困
- 2021年9月21日民主主義を守る-衆議院総選挙に向けて
- 2021年8月26日デジタル改革関連法の危惧―マイナンバーカード普及急ぐ政府
- 2021年6月21日コロナ禍における医療崩壊の危機―今こそ社会保障の建て直しを
- 後期高齢者の医療費2割負担化は撤回をー 法案の徹底審議と廃案を求める
- 2021年4月15日介護現場の処遇改善につながる介護報酬改定に
- 2021年3月17日当会に未入会の先生方へ:奈良県保険医協会にぜひご入会ください――ともに活動し、明るい未来を切り開きましょう
- 2021年2月15日日本は核兵器禁止条約に参加を
- 2021年1月26日新年のご挨拶
- 2020年12月22日「自助・共助・公助」の原点、歴史を振り返る
- 2020年11月17日第55回定期総会開催にあたり
- 2020年10月26日「罪」多い安倍政治――継承でなく総括を
- 2020年9月15日これからのコロナ感染対策、これまでの臨床現場での対応
- (休載)
- 2020年7月17日マイナンバーカードによるオンライン資格確認に反対する
- 2020年6月16日新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックをどう見るか
- 2020年5月26日今こそ、消費税減税で経済立て直しを
- 2020年4月19日2020年診療報酬改定について
- 2020年3月26日当会に未入会の先生方へ:奈良県保険医協会にぜひご入会ください――ともに活動し、明るい未来を切り開きましょう
- 2020年2月14日高額医薬品の問題点
- 2019年12月27日新年度を迎えるにあたって―会員の力を結集し、共に歩む奈良県保険医協会であるために
- 2019年11月22日第54回定期総会でお会いしましょう
- 2019年10月29日消費税増税、10月1日から10%に―医療機関にとっても大打撃
- 2019年9月25日第25回参議院選挙の結果を受けて
- 2019年7月18日【健保法等改定】マイナンバーカードで保険証情報確認など――情報漏洩、社会保障給付抑制のおそれ
- 2019年6月18日参議院選挙、投票に行こう―社会保障の充実と消費税を争点に
- 2019年5月18日九条加憲は平和理念を変質させる―日本国憲法を守ろう
- 2019年4月23日消費税率10%引き上げは中止を
- 2019年3月15日[当会に未入会の先生方へ]奈良県保険医協会にぜひご入会ください―ともに活動し、明るい未来を切り開きましょう
- 2019年2月18日荒井県政の4期を振り返って―地域別診療報酬阻止を知事選の争点に押し上げよう
- 2018年12月17日第53回定期総会にご参加を
- 2018年10月26日憲法25条を守りいかす社会保障への転換を―健康で文化的な最低限度の生活ができる社会に
- 2018年9月29日大阪北部地震を受けて―原発銀座・若狭湾の危険性を改めて考える
- 2018年7月26日医科歯科連携の重要性―今次改定とも絡めて
- 奈良県の地域別診療報酬は断固反対―医療の質の低下、県民の医療サービス低下にもつながる
- 2018年5月18日子どもの医療費助成、次は県制度の償還払いを現物給付に
- 2018年4月24日2018年度診療報酬の特徴―地域包括ケア・2025年を見据えた医療機能分化・強化・連携の推進が色濃く
- 2018年3月15日当会に未入会の先生方へ:奈良県保険医協会にぜひご入会ください―ともに活動し、明るい未来を切り開きましょう
- 2018年2月14日どうなる2018診療報酬改定―現場の実情に沿った診療報酬と社会保障の充実を
- 2017年12月15日衆議院解散・総選挙を終えて―医療と社会保障を大切にする政治に
- 2017年11月17日奈良県保険医協会第52回定期総会でお会いしましょう
- 2017年10月23日このままで良いのか憲法改正―この国の未来を問う総選挙の争点に
- 2017年9月14日2018年度予算概算要求について―社会保障・診療報酬の充実を求める
- 2017年8月4日改正介護保険法の問題点
- 2017年6月22日改めて、保険で良い歯科医療を考える
- 2017年5月18日反面教師である米国の医療制度から学ぶべきこと
- 2017年4月24日共謀罪(テロ等準備罪)の危険性
- 2017年3月21日【当会に未入会の先生方へ】奈良県保険医協会にぜひご入会ください
- 2017年2月20日社会保障費圧縮、高齢者にしわ寄せ―今年も医療改悪が行われようとしている
- 2016年12月23日地位協定と国民皆保険の接点
- 2016年11月15日奈良県保険医協会は、創立50年を迎えます―第51回定期総会でお会いしましょう
- 2016年10月14日高度急性期・急性医療病床削減は拙速―奈良県地域医療構想を考える
- 2016年9月20日「憲法改正」は必要なのか
- 2016年8月22日経済政策を前面に与党が勝利、改憲・社会保障政策にいっそうの注視を―参院選を終えて
- 2016年7月19日再生可能エネルギーをどう考えるのか
- 2016年7月1日第24回参議院選挙へ向けて―医療・社会保障の充実を求めよう
- 2016年5月25日子どもの医療費助成が通院も中卒まで拡充、次は県制度の償還払いを現物給付に
- 2016年4月18日TPPで潰される日本の国民皆保険制度
- 2016年3月15日大幅なマイナス改定、医療改善には遠く――診療報酬改定4月1日実施
- 2016年2月23日
川内 原発再稼働を視て思うこと――死にそうな日本 - 2015年12月24日医療事故調査制度の本質
- 2015年11月17日第50回定期総会でお会いしましょう
- 2015年10月26日国民を統制するマイナンバー法施行
- 2015年9月19日「アベノミクス」と「社会保障」の行方
- 2015年8月28日安保関連法案の強行採決を許さず、廃案に追い込もう―医療人として、日本を戦争する国にしてはいけない
- 2015年7月18日沖縄・普天間基地の撤去を。辺野古への移設は到底許せない
- 2015年6月19日もっと女性医師・歯科医師に活躍の場を―女性会員の活動を強化し、組織の発展につなげよう
- 2015年5月19日「集団的自衛権」の行使容認について―明治から現在までを振り返って
- 2015年4月21日介護報酬の抜本的引き上げと介護職員の処遇改善を
- 2015年3月19日米国の「保守主義」に翻弄される日本の社会保障―プログラム法による医療制度改革はいらない
- 2015年3月6日子ども・障がい者等の医療費窓口無料化と改善を―県福祉医療制度、償還払いを現物給付に
- 2014年12月12日混合診療解禁につながる「患者申出療養制度」は阻止しよう
- 2014年11月17日第49回定期総会にご参加を
- 2014年10月22日集団的自衛権行使容認の閣議決定―その背景にあるもの
- 2014年9月18日医療の消費税はゼロ税率で
- 2014年7月30日押し寄せる波――「地域包括ケア」に開業医として、どう立ち向かうのか
- 2014年7月1日「医の倫理」次の世代へ伝えるため、過去の過ちにと向き合い検証を~京都と近畿での取り組みにご協力を
- 2014年5月20日経済優先の意図がより鮮明に―2014年診療報酬改定
- 頼れる保険医のパートナー:奈良県保険医協会にぜひご入会ください
- 日本を、戦争する国にしてはならない
- 会員のための共済制度、上手に利用しよう―年金、グループ保険、募集再開の休業保障も順調
- 2013年12月25日「一体改革」を具体化する―2014年診療報酬改定と消費税増税
- 2013年11月27日国民から真実を覆い隠す特定秘密保護法案は廃案にすべき
- 2013年11月5日会員各位のご意見を聴かせてください―奈良県保険医協会・第48回定期総会
- 2013年10月1日消費税:改めて増税に断固反対、医療にはゼロ税率を
- 2013年7月27日[共通番号制度] 幾重にも懸念―制度実施の撤回など見直しを
- 2013年6月20日第23回参議院選挙へ向けて―医療・社会保障の充実を求めよう
- 2013年5月22日混合診療解禁で医療を儲けの場にしてはいけない―国民皆保険制度を守ろう
- 2013年4月17日東日本大震災と福島原発事故から2年を経て―窓口負担の免除継続と健康管理が必要
- 2013年3月22日未入会の先生へ:奈良県保険医協会にぜひご入会ください―より良い医療をめざし、先生方をサポートします
- 2013年2月13日休業保障がいよいよ募集を再開―ぜひこの機会にご活用を
- 2012年12月19日改正国税通則法施行を控えて―納税者自身が権利意識を持つ事が益々重要に
- 2012年11月13日第47回定期総会にご参加を
- 2012年10月12日衆議院解散・総選挙で国民に信を問う―医療・社会保障を争点に
- 2012年9月22日切り捨て先行型の予算は許せない―2013年度概算要求について
- 2012年9月19日(休載)
- 2012年7月17日デフレ、不況時の増税は危険―消費税増税は中止、医療はゼロ税率を適用せよ
- 2012年6月20日2012年診療報酬改定を終えて―医療費の財源と配分の中身が問題
- 2006年5月10日診療報酬マイナス改定の衝撃
- 2006年4月10日現場を無視した乱暴で異常な診療報酬改定―強く抗議し、診療報酬の改善を求める
- 2006年3月10日(休載)
- 2006年2月10日(休載)
- 2005年12月10日(休載)
- 2005年11月10日(休載)
- 2005年10月10日県福祉医療制度の「改正」が実施されて
- 2005年9月10日第14回奈良県保健医療福祉研究集会を成功させよう
- 2005年8月10日(休載)
- 2005年7月10日医師も患者もともに悲しむ未来はいらない~2006年医療抜本「改革」を阻止し、日本の医療を守ろう
- 2005年6月10日第20回保団連医療研究集会を成功させよう
- 2005年5月10日「混合診療」の合法的具体化――
特定療養費制度で「制限回数を超える医療行為」 - 2005年4月10日(休載)
- 2005年3月10日介護保険改正真の狙いは介護給付費の抑制だ
- 2005年2月10日受診抑制と生活不安を増大させる県の福祉医療制度“後退”は阻止しよう
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