奈良県保険医協会

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「一体改革」を具体化する―2014年診療報酬改定と消費税増税

 民主党政権末期から三党合意をへて自公政権へと引き継がれた「税と社会保障」の「一体改革」は、結局、消費税引き上げで国民の広範な負担を強いる一方で、社会保障においては強化を掲げながら実のところは自助を基本として給付を絞り負担を増大する改悪であった。私たちはその路線の転換を訴えているが、今般の診療報酬改定をめぐっても、その一体改革の本質がまざまざと表れつつある。
 来年2014年4月には診療報酬が改定される。
 その議論は、厚生労働省と関係の審議会において活発に展開され、11月までに社会保障審議会医療保険部会で基本的な方針の議論がおこなわれ、12月6日付でとりまとめ発表された。中央社会保険医療協議会(中医協)でも議論が続けられている。
 基本方針では、「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」を重点課題としているが、「一体改革」の流れのなかで給付削減の圧力が強まるもと、医療費の抑制・重点化を推し進める形で、この方針が具体化されるおそれが強い。
 来年度の政府予算案で内閣が、診療報酬改定にどれほどの改定率を当てるかによりその中身も大きく左右される。
 2000年代の診療報酬の大幅なマイナス改定とその後のわずかなプラスか横ばいという状況がつづき、医療機関経営はきわめて厳しい。診療報酬は国民に提供される医療の内容と水準を決めるものである。そして保険診療の安定した継続を保証するものでなくてはならない。技術料をしっかり報酬面で評価し、人件費をはじめ保険診療の経費がきちんと賄えるだけの引き上げが強く望まれる。
 来年4月に消費税を8%に引き上げることを安倍晋三首相が決定した。
 保険診療は非課税とされていながら、保険医療機関がその経費で負担した消費税は補填がなされない、いわゆる「損税」となっている。厚労省は、税導入時と税率3%から5%への引き上げ時に診療報酬改定で補填済みとの立場だが、一部の項目の点数を引き上げたものの、その後の改定で包括されるなど廃止になった項目もあり、雲散霧消、到底、補填されているとは言えない。「損税」は医科診療所で年間260万円、歯科診療所で72万円に及ぶとの試算もある。
 さらに税率を引き上げると医療機関経営をいっそう圧迫する。
 ところが、今般の税率引き上げで、またも政府は診療報酬の一部項目に点数をつけることで対応する方針を示している。
 私たちは消費税増税に反対だが、少なくとも医療機関の「損税」を無くすため、保険診療にゼロ税率を適用し経費にかかった消費税の還付を求めている。ますますその必要性を強く訴える。

【奈良保険医新聞第377号(2013年12月10日発行)より】


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