奈良県保険医協会

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今こそ憲法を守って平和な日本を

 プーチン・ロシア大統領が突然ウクライナに軍事侵攻してすでに2か月以上になる。この間ウクライナ各地で戦闘が繰り広げられ、多くの犠牲者や避難民が発生し、ロシア軍による虐殺など連日地獄のような状況が伝えられている。国際社会のロシアへの経済制裁やウクライナへの軍事支援などがあるものの、戦争の終結は見通せない。

 日本ではウクライナ侵攻をきっかけに、憲法改正論議や核共有論などが安倍元首相、自民党や日本維新の会で湧き上がっている。自民党の安全保障委員会では敵基地攻撃論や軍事費のGDP比2パーセント増額論など、戦後辛うじて守られてきた規律をも破らんとする議論が進んでいる。

 いわく、日本周辺には虎視眈々と日本侵略を狙っている国がある。日本は侵略を抑止出来る軍事力を持つ必要がある。更には攻撃の兆候があれば敵ミサイル基地はもちろん、相手の指揮統制機能の破壊能力を持ち、先制攻撃をも辞さない覚悟が必要だ。日本が必死に反撃する姿を見せることで初めて国際社会も連帯に動く、反撃しない国は国際社会の支援を得られない。そのためにも9条の改憲が必要だ、という。

 しかし今一度冷静に考えたい。自然権としての自衛権は現行憲法でも認められている、というのが法学の多数意見である。自衛隊が侵略に対して自衛のために戦うことは現行の憲法下でも可能である。彼らが言うように9条を変えなければ国を守れない、というのはまやかしである。戦争が起きた時点で、例えそれが侵略戦争だとしても政権にとって失政であったと言わざるを得ない。戦争を起こさない、という事は政府として何にも増して守らなければならない最大の命題であることを強調したい。そして戦争を起こさないためにも、自衛力は軍事力によるものだけではなく、外交力やその裏付けとしての情報収集力が必須である。国としての確固たる国家戦略の確立が何よりも必要である。

 更に言うならば最大の自衛力は多くの国民が、国家の存在に価値を見出せるような国家たることではないだろうか。果たして今の政権にそのような思想や覚悟、目標があるだろうか。今声高に言われている核や軍事力による抑止力だけで侵略を防ごうという思考は東西対立時代の軍拡競争に再び足を踏み入れる愚行である。何よりもその軍事力を保持するためには、大増税か今以上に医療をはじめとする社会保障を削減しなければならない事は火を見るよりも明らかである。このような政策が多くの国民が望む国家像であろうか、守るべき価値のある国家と言えるだろうか。

 日本国憲法前文で高らかに謳われている「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という文言は決して絵空事の理想論ではない。今の状況の中でこそ目指すべき指標である。

【奈良保険医新聞第476号(2022年5月15日発行)より】

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