奈良県保険医協会

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医療の消費税はゼロ税率で

 1989年に消費税が導入されて25年経つが、医療福祉は後退する一方で、消費税導入は福祉のためだというのは、まったくのごまかしであったことがわかる。
 消費税は原則としてすべての商品の販売、サービスの提供などの取引に課税されるが、納税は事業者が行う。医療にかかる消費税は診療報酬上は非課税であるが、仕入れにかかる消費税は支払わなければならないため、損税が発生する。ゼロ税率であればこの仕入れにかかる消費税が還付されるので、保団連は一貫してゼロ税率を要求している。
 消費税法上、課税取引と非課税取引があり保険診療は非課税になっており患者は受診した際消費税を支払わない。医療が国民の生命や健康に直接関わるものであり、社会政策的配慮からみて課税することが適当でないとされているためである。「ゼロ税率」は、医業の公益性と社会保障の観点から医療にかかる消費税の免除を求め、医療機関が仕入れた段階で支払った消費税は税務署に申告し、還付を受けようという制度である。
 軽減税率は、診療報酬にも消費税をかけるが、還付を受けられるため損税は発生しないが患者負担が増えることになる。例えば標準税率10%、軽減税率五%の場合だと食料品などを1000円分買えば100円の消費税がかかるが、診療報酬には5%の税で1000円の自己負担に対し50円の消費税がかかる。仕入れにかかる消費税は戻ってくるので医療機関に損税は発生しないが、患者は保険診療を受けた際軽減されているとはいえ税負担分を支払うことになる。
 医療機関の損税は診療所では数十万から数百万、病院では千万、大病院では億単位である。一例として社保収入が年間3000万円規模の診療所では40万円、9000万円規模の診療所では年間50万円以上の消費税を負担している。病床数が300床と複数のサテライト診療所を持つ医療法人では、年間5000万以上の消費税を負担している。消費税が10%になれば、さらに損税が膨らむことになる。
 消費税増税分は診療報酬改定時に上乗せされているとのことだが、実際にはそれを上回る損税を負担している。
 保団連、保険医協会としては消費税増税に反対し、同時に医療機関の損税を解消するためゼロ税率の実現はぜひ必要であると考える。

【奈良保険医新聞第384号(2014年9月10日発行)より】


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