奈良県保険医協会

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東日本大震災と福島原発事故から2年を経て―窓口負担の免除継続と健康管理が必要

 東日本大震災から2年が経過したが、生活基盤を失った避難者が現在でも32万人居る。地域復興のため公共インフラの復旧が急がれているがその進捗は遅々としてすすんでいない。

 被災者を対象に国は医療、介護の保険料、窓口負担を全額免除したが、昨年2月末で健保組合、協会けんぽが、同様に昨年9月末に国保、後期高齢者、介護が打ち切られた。一部の被災自治体は国保、後期高齢者、介護の窓口負担免除を継続しているが、財政難を理由に本年4月以降免除を打ち切った自治体も多い。

 実際、岩手県保険医協会の調査では、昨年10月より窓口負担が発生した社会保険の方で、負担発生後に、「通院回数を減らした」「通院できなくなった」方は46.4%、同様に宮城協会の調査では国保、後期高齢者の免除が終了された方の53%が、「通院科目、回数を減らした」「受診を止めた」と回答している。震災により自宅を失くし、生活基盤を奪われた国保の対象者、健康不安の高い後期高齢者を切り捨てる酷い措置である。国は20兆円におよぶ膨大な復興予算を組みながら、800~1000億円の窓口負担にかかる費用を出し渋っている。被災自治体に負担を押し付けるのではなく、責任を持って全額免除を継続すべきである。

 これからの健康被害、不安は福島県では深刻だ。原発事故より2年が経った現在、県内外の避難者は15.5五万人。県の調査では県内の死者3106人のうち、避難長期化による体調不良や過労、自殺などで亡くなった「震災関連死」は4割以上を占めている。同様の調査をおこなった岩手、宮城の両県の「震災関連死」は7~8%であり、福島県のそれは突出した数字である。

 福島第一原発事故により発生した大量の放射性物質が東北、関東を中心に日本全体に振り撒かれた。大気中、土壌、草木、河川、海に高濃度のさまざまな放射線核種が蓄積し、内部被曝の影響が懸念される。

 実際、小児の甲状腺異常が報告されつつある。続いて心臓疾患、感染症などの異常が明らかになりつつある。そして憂慮すべきは、最も放射能に弱い胎児に対する影響だ。昨年12月に奈良民主医療機関連合会が東北・関東方面から奈良に被曝避難されてきた70名あまりの家族の健診を行った。筆者も有志として健診に参加したが、問診したある若い母親は震災後に妊娠して4カ月で胎児異常との診断で堕胎したそうだ。その母親の友人にも流産が多かったとのことだ。これらを一様に放射能の被害と結びつけることはできないが、きちんとデータを取り分析していくことが大切である。放射能による健康被害に対して医師は微力だ。それでも健康被害を最小限にすべく、定期的な検診を何十年にもわたって続ける必要がある。そして第二の福島が発生しないように声を上げなければならない。

【奈良保険医新聞第369号(2013年4月10日発行)より】

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