奈良県保険医協会

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高齢者を標的にした医療費負担増制度は中止を

 昨年6月、75歳以上の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる2倍化法が強行され、この10月1日から実施となっている。年収200万以上で75歳以上の後期高齢者の医療費一部負担が1割から2割に引き上げられる。長引くコロナ禍で国民生活には負担がかかる一方、医療制度の改悪によりますます苦しくなることは目に見えている。

複雑な激変緩和措置

 激変緩和措置として一定の自己負担以上には還付があるが、かなり複雑な仕組みになっており、混乱する事態が予想される。緩和措置は1割から2割に負担が増加した場合に、増加額を3000円以内に抑えるというもの。ただし窓口負担の上限ではなくあくまで負担増の差額補填のため、窓口での計算など混乱も予想される。また、償還払いには高額療養費の口座が利用される。口座が登録されていない患者は各都道府県の後期高齢者医療広域連合や市区町村から郵送される申請書を使って手続きを行うことになる。複数の医療機関で合算となるため、一部負担金差額の計算は誰が行うのか、自身で把握し申請が必要となると、そのような複雑な制度を高齢者が理解し自ら申請することができるのか。医療機関の窓口でも事務負担が増えることなどが予想される。

現役世代への影響はごく僅か

 医療費2倍化の対象となる高齢者370万人の負担増の総額が平年ベースで1900億円、高齢者1人当たりの負担増は年間約5万2000円。また、政府はこの改悪を「現役世代の負担軽減のためだ」と繰り返し説明してきましたが高齢者の窓口負担2倍化による現役世代の負担軽減は、現役世代1人当たり年間350円、1月あたり30円の保険料軽減にしかならない。

 コロナ禍以降、高齢者も外出機会が奪われ、健康悪化などが危惧されている。これ以上、高齢者に痛みを押し付ける改悪は許されない。10月実施予定の2割負担は実施すべきではない。

【奈良保険医新聞第480号(2022年9月15日発行)より】

主張

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