奈良県保険医協会

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県福祉医療制度をすべて現物給付に

 奈良県の福祉医療制度(子ども、心身障がい者・重度、ひとり親家庭等)は、未就学児を除き自動償還払いで、窓口で一旦医療保険の自己負担全額を支払い、通院1医療機関500円、入院月1000円を差し引いた額が、数ヵ月後に個人の銀行口座に振り込まれる。他府県では現物給付化されているのに奈良県では償還払いのままだ。ひとり親家庭などからは現物給付化を望む切実な声が上がっている。

子どもの医療費助成前進の経緯

 奈良県保険医協会では20年以上前から乳幼児医療費無料化を求める運動に取り組んできた。2005年に入院のみ就学前まで拡大されたが、現物給付ではなく自動償還に改悪された。老人医療は廃止、障がい者、ひとり親(当時は母子家庭)、重度心身障がい老人等についても無料だった医療費に一部負担が導入されてしまった。子どもの医療費については、2007年から通院も就学前までに助成が拡大されたのをきっかけに対象年齢が段階的に引き上げられ、2016年8月より通院も中卒まで助成が拡大、小・中学生の通院については、一部負担金は1000円とされた。奈良県は国保料の国庫負担金が減額調整されることを理由に現物給付化を拒んできたが、就学前のペナルティ解消に伴い2019年8月より就学前までに限り、通院・入院とも現物給付化された。

先進自治体に学び、制度を前進させよう

 群馬県では、入院・通院ともこどもの医療費は中学校卒業まで完全無料、所得制限なしの制度を2009年から実現している。同県の状況は虫歯の治療完了児童の割合が増えた、時間外救急の件数も減ったなど、完全無料にしたからと言ってコンビニ受診の割合が増えた訳ではなく、早期発見、早期治療により長い目で見れば医療費削減の効果もあると言える。

 奈良県内でも山添村(20歳まで)や平群町(18歳まで)など独自に上乗せしている自治体もある。生駒市でも来年から18歳までの上乗せと就学前までの一部負担撤廃を発表した。通院・入院を合わせた一部負担の撤廃は、実現すれば県内12市の中で初となる。

来春の知事選に向け運動を強めよう

 保険医協会では現在、「奈良県の地域医療を守る会」の一員として県福祉医療制度の改善運動に取り組んでいる。①福祉医療制度の現物給付化、②子どもの医療費助成制度の高卒までの拡充、③一部負担金を撤廃し完全無料化、④所得制限の撤廃、⑤障がい者の対象を等級で限定せずすべての手帳保持者に拡大することなどを求めている。 来春には県知事選挙と統一地方選挙が予定されている。福祉医療制度改善が選挙の争点になり各候補者の公約にも掲げられるよう、運動を強めていく。

【奈良保険医新聞第483号(2022年12月15日発行)より】
 

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