奈良県保険医協会

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コロナ禍と貧困

 昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大により、働きざかりの子育て世代や女性の失業、貧困問題が深刻となっている。派遣や非正規と言った不安定雇用で職を得てきた30代後半から40代のロスジェネと呼ばれる就職氷河期世代が、コロナ禍により一斉に職を失う事態になった。

貧困の多様化
 貧困問題をサポートしているNPOなどによると、水や電気が止められ住居を失い、通信手段も遮断され、着のみ着のままで連絡してくる方がコロナ前に比べて増えているとのこと。
 また、ホームレスになる年齢層も多様化している。ホームレス支援で行う炊き出しも、以前は中高年の男性が中心だったが、最近は若者や女性の姿が目立つという。それほど、飢餓レベルの貧困が広がり、私たちの社会の底が完全に抜けてしまっていること、貧困は他人事ではなく、いつ誰の身に降りかかってもおかしくないということになる。

生活保護は国民の権利
 今年2月の生活保護の申請件数は1万7千件あまり、前年の同月より増え6カ月連続増加している。生活保護受給世帯も増えているが捕捉率は諸外国より低く、収入が生活保護基準を下回っていても、生活保護だけは受けたくない、と頑なに拒否されるケースも多い。また、著名人による生活保護バッシング等がたびたび問題となっているが、支援団体等の運動の成果もあり厚生労働省が「生活保護は国民の権利です」というメッセージを出す、扶養照会についても一定の制限をかけるなど不十分ながら前進している面もある。

経済的不安がコロナ感染にもたらす影響
 そう言った生活に余裕のない層が新型コロナウイルスに感染してしまうと、独居で自宅療養を余儀なくされる場合、共働きやひとり親家庭においては親だけが感染してしまった場合子どもの世話等は誰がするのか、また濃厚接触者になり自宅待機となってしまう場合の賃金保障の問題もある。万一陽性であったらたちまち収入が途絶えて生活できなくなってしまう、と検査を拒否される例も県内であったという。たちまち窮地に追いやられるのが貧困層や子育て世代などの社会的弱者ではなかろうか。

第6波に備え新政権に臨むこと
 第5波ではワクチン接種がほぼカバーされた高齢者の感染は一定抑えられたものの、接種できなかった40代・50代の感染者が自宅療養中に死亡するなどの痛ましい事態も全国で起こってしまった。必ず来ると言われている第6波に備え、一刻も早く国民の不安を和らげるためコロナ対策、雇用問題への手厚い支援が求められている。
 9月29日に自民党総裁選挙が行われ、岸田文雄氏が第100代総理大臣に就任した。特技が「人の話をしっかり聞くこと」であれば、一刻も早く医療福祉の現場に行き、耳を傾けるべきではなかろうか。また来るべき総選挙にはコロナ禍により混沌とした日本を変えてくれる候補者、政党に一票を投じたい。

【奈良保険医新聞第469号(2021年10月15日発行)より】

主張

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