奈良県保険医協会

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介護現場の処遇改善につながる介護報酬改定に

 3年に1度の介護報酬改定が4月1日に実施された。介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものである。「0.7%引き上げ(うち0.05%は、COVID-19の特例的対応として9月までの時限的措置)」を前提としたものだが、この引き上げ幅では、新型コロナ感染症対策の強化、介護職員の処遇改善や求められる介護サービスの向上には全く不十分である。特に、コロナ対策のための特例的対応として、今年9月までは所定単位数の1000分の1001で算定できるとしているが、この程度ではコロナ対応に全く見合わない。

居宅療養管理指導における単一建物居住者減額問題
 医師・歯科医師の居宅療養管理指導は、「居宅療養上の指導や他の事業所との連携」を評価するものであって、訪問診療にかかわる費用は、医療保険で評価している。
 したがって、「単一建物居住者」の人数によって報酬減額を行う理由はなく、「単一建物居住者数」に対する減額を廃止すべきである。
 少なくとも、単一建物居住者月10人以上の場合であってもプラス改定とすべきである。

介護療養施設サービス費の引き下げは介護医療院への誘導
 介護療養施設サービス費について認知症疾患型は引き上げられたが、病院型は1日につき1人45単位~117単位も引き下げられ、60床では年間2,000万円以上もの減収となる。また、診療所型も1日につき1人43単位~85単位もの大幅な引き下げとなっている。
 これは、介護医療院への転換を強要するためのものであるが、転換できない施設は、直ちに経営が立ち行かなくなる。介護療養病床は、新型コロナウイルス感染症拡大の中で必要な施設サービスを提供するために献身的に努力している。こうした中で報酬を引き下げることは、施設、職員の献身的な努力を踏みにじるものであり、施設サービス費の引き下げは、直ちに中止すべきである。

医療系介護報酬は区分支給限度額から外すべき
 訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、医学的な必要に応じて実施すべきであるが、区分支給限度基準額の範囲でしか介護保険給付を受けられない。
 これらのサービスや、区分支給限度基準額の対象外である居宅療養管理指導や介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院における介護を除く部分は医療そのものであり、医療保険の窓口負担率を大幅に引き下げて、医療保険給付に戻すべきである。
 少なくとも、区分支給限度に組み込まれた訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護は、区分支給限度の対象から除外すべきである。

 精神的、肉体的にも大変な仕事であるにもかかわらず低賃金の介護現場は、離職者も多く、コロナ禍の今、人手不足でますます危機的な状況にある。現場を支えるエッセンシャルワーカーの労働に見合う十分な賃金を保障するため、介護報酬の大幅引き上げこそが必要である。

【奈良保険医新聞第463号(2021年4月15日発行)より】

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