奈良県保険医協会

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2020年診療報酬改定について

 今次改定は、本体部分を0.55%引き上げたが、そのうち0.08%を「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」とし、一方薬価は0.99%、医療材料価格は0.02%引き下げ、診療報酬全体の改定率は、0.46%のマイナス改定である。

医科はかかりつけ医機能強化
 外来では、初・再診料は据え置かれる中、「かかりつけ医機能」の一層の明確化と、更にすそ野を広げる改定が行われる。
 病院外来の専門外来化に向けて、紹介状なしの大病院の受診時定額負担の対象病院を拡大する。地域医療支援病院については、許可病床400床以上から一般病床200床以上に広げる。ほぼ全ての地域医療支援病院が対象になり、新たに約250病院が増えた。
 地域包括診療加算では、時間外対応加算Ⅲの届出でも要件を満たすこととされ、対象医療機関が拡大される。小児かかりつけ診療料と小児科外来診療料の対象患者は3歳未満から6歳未満に拡大された。
 他方、機能強化加算の届出に伴い必要な院内掲示に「専門医への紹介を行う旨」の追記と、掲示内容を記した書面を配置し、患者の求めに応じて交付することとされた。小児科外来診療料も届出が必要となる。「かかりつけ医機能」の周知・普及を更に進める狙いであるといえる。全体として、「かかりつけ医機能」拡大中心の改定となっているが、依然、医療現場の実態に見合った評価とは言い難く、基本診療料含め医療機関全体の底上げを図る評価が必要である。
 オンライン診療の改定として、事前の対面診療期間の短縮、医療資源の少ない地域での初診からの算定可能、対象患者の拡大などが盛り込まれているが、いずれにしろ通常の診察での外来管理加算、医学管理などを算定できない萎縮診療である。今回の新型コロナウイルス感染の脅威に対して臨時に電話再診だけで処方箋を薬局にFAXできる事を可能としたが、この災禍をオンライン診療への浸透の材料に使われる危惧があり、医師の診療技術を安上りにしようとする動きには注意したい。

歯科医療の一層の充実と金パラ逆ざや問題の解決を
 歯科診療報酬0.59%プラスで、2018年度の0.69%プラスを下回った。政府はこれまで骨太方針では3年連続で歯科の記述を書き込んだことで「歯科重視」をアピールしていたにも関わらず2018年度さえ下まわる改定率である。
 今回は、わずかな改定率の枠内でも、一定の引き上げがなされた。しかし、歯科医療機関の厳しい現状を打開するには不十分である。また、歯科衛生士や歯科技工士の技術や労働が適正に評価されず、歯科衛生士の雇用確保や歯科技工料の適正な支払いも困難なままである。さらに、歯科医院経営を圧迫し続けている金パラの「逆ザヤ」も、今次改定では解消されない。
 今年に入り新型コロナウイルスが日本でも世界的でも拡大する中、医療従事者は命懸けで診療に当たっている。診療報酬への正当な評価と、請求にあたっても政府にはぜひ柔軟な対応をお願いしたい。

【奈良保険医新聞第451号(2020年4月15日発行)より】

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