奈良県保険医協会

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改めて、保険で良い歯科医療を考える

6月は歯の健康月間
 6月には「歯と口の健康週間」(6月4日~10日)が取り組まれ、学校健診も各地で実施されるなど歯科に関心が向けられる時期だ。
 う蝕と歯周病は代表的な歯科疾患であるが、高齢化に伴って歯周病は身近に迫ってくる。罹患率も高くピークの55~64歳で84.6%。歯を失う大きな原因でもある。
 う蝕は感染部位を除去し、自分の歯の基礎はそのままにして、除去され失われた部分は様々な材料で再構築できる。一方歯周病は進んでしまうとそうはいかない。歯を支えている周辺組織の感染により、みすみす無傷の歯を抜かざるを得ないことさえある。しかし歯のなくなった部分には義歯や、最近ではインプラントさえ入れて機能回復できる。
 しかし問題は歯周病により、絶えず腫れたり、排膿(歯肉出血)していることが続いていること、慢性炎症巣としての歯周病にある。

全身疾患に関わる歯周病
 近年糖尿病をはじめ多くの疾患の原因として慢性炎症が取りざたされている。その最大の原因は肥満における脂肪細胞であり、大きな慢性炎症巣として理解されている。慢性炎症巣に起因するサイトカインは糖尿病の改善を妨げ、悪化させる。リウマチも然りである。
 また歯周病の感染源である歯周ポケットに棲息する細菌は血管に悪い影響を与えている。無菌的血管内に持続的に細菌を送り出し菌血症を起こす。冠動脈はじめ多くの血管の動脈硬化、血栓の形成に関わっており、その病巣から歯周病由来の細菌が検出されている。

 年齢を重ね心身の具合が損なわれていくと、口から摂食すること、咬むことは大きな喜びになっていく。そのための機能回復は大切ではあるが、今や死亡原因の3位を占めている高齢者肺炎、その大半は口腔内細菌のたれ込み(誤嚥性肺炎)に起因するのであるが、その防止に口腔ケア、口腔内の専門的清掃が注目されている。平均在院日数の低下にも欠かせないものになりつつある。

これからの歯科医療
 今や歯科医院の数は6万9千近くに及ぶが、過剰であるとの時代から何れ大きな役割を担う健康づくりの拠点になっていく必要があると思う。
 そのためには歯科医師も単にう蝕、歯周病治療に加えて、どのような食品をいかに咀嚼嚥下し、全身状態をいかに維持、回復、改善しているかに関わっていかねばならないだろうし、医科歯科連携がもっと日常的に気軽にできるようになっていくことを望むものである。

 また、歯科の場合医科よりにもさらに低い低診療報酬の問題があり、まっとうな保険診療を行おうとするほど、経営が苦しくなるという側面もある。
 協会として「保険で良い歯科医療の実現を求める請願」署名や入れ歯デー・いい歯デーの啓発活動などに今後もとりくんでいく予定である。

【奈良保険医新聞第417号(2017年6月15日発行)より】

主張

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