奈良県保険医協会

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子ども・障がい者等の医療費窓口無料化と改善を―県福祉医療制度、償還払いを現物給付に

 奈良県の福祉医療制度(子ども、心身障害者、ひとり親、重度心身障害老人等)は、窓口で一旦医療保険の自己負担全額を支払い、1医療機関につき月に通院は500円、入院は1000円を差し引いた額が、数カ月後に個人の銀行口座に振り込まれる自動償還払い制度となっている。
 奈良県保険医協会では20年以上前から乳幼児医療費無料化を求める運動に取り組み、0歳しか助成がなかったものを1997年に2歳までの助成拡大ができた。そして2000年代にも「子どもの医療費無料化を求める会」を立ち上げ、2005年には入院のみ就学前まで拡大されたが、現物給付ではなく自動償還に改悪された。老人医療は廃止、障がい者、ひとり親(当時は母子家庭)、重度心身障がい老人等についても無料だった医療費に一部負担が導入されてしまった。子どもの医療費については、2007年から通院も就学前までに助成が拡大した。
 全国的には少子化対策という側面もあり、入院・通院は中卒、高卒までという自治体も増えており奈良県の制度は遅れていると言わざるを得ない。また全国的には現物給付の自治体が37と多く(2014年9月時点)自動償還払いは少数派だ。
 昨年7月より当会では他の医療団体や女性団体とも協力し「奈良県福祉医療制度の改善を求める会」を立ち上げ、署名運動等に取り組んでいる。そして累計2万筆以上の署名を奈良県に提出した。特に小さい子どもや障がい児・者は医療にかかる機会も多い。特に重症になると、一回の支払いが数万円になることもある。当事者からは、そんな時、窓口で一旦立て替えではなく現物給付であれば良かったのに、という声がよく聞かれる。
 当局に要請した際にいつも自動償還制度を採用している理由として「現物給付にした場合、国保の国庫負担金が削減されるというペナルティがある」ということを挙げられる。国がそのような仕組みにしていること自体がおかしいのだが、群馬県では、通院・入院とも中学校卒業まで完全無料、所得制限なしを2009年から実現している。
 虫歯の治療完了児童の割合が増えた、時間外救急の件数も減ったなど、完全無料にしたからと言ってコンビニ受診の割合が増えた訳ではなく、早期発見、早期治療により長い目で見れば医療費削減の効果もある。もちろん助成拡充したことにより、県の財政負担は増えるが、子どもを未来の宝として子育て支援を充実すれば少子化対策にもつながるであろう。
 奈良県では、4月の統一地方選挙と同時に奈良県知事選挙も予定されている。ぜひ、県知事選ではこの福祉医療制度の窓口立て替え払い撤廃と子どもの医療費については対象年齢をさらに広げることを焦点とし、気運を高めていきたいと考えている。

【奈良保険医新聞第389号(2015年2月10日発行)より】


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