奈良県保険医協会

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日本を、戦争する国にしてはならない

 安倍晋三首相は昨秋の臨時国会の所信表明で「積極的平和主義」を唱え、「『現実』を直視した、外交・安全保障政策の立て直し」を掲げ、国家安全保障会議の創設、「国家安全保障戦略」策定、日米同盟を基軸とすること、在日米軍再編と日米合意を進める考えを示し、多くの国民の反対や不安の声をよそに特定秘密保護法を強行成立させ、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法(改正法)を制定、同会議を設置した。
 1月開会の通常国会の首相施政方針演説では、集団的自衛権や集団安全保障などについて、「『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の報告を踏まえ、対応を検討する」とした。
 昨年8月、安倍首相は内閣法制局長官に、法制局の外部から外交官出身の小松一郎氏を任命した。同職は内閣での「法の番人」といわれ、従来は局内から昇格して任命されていた。だが、小松氏は第一次安倍内閣の安保法制懇談会で集団的自衛権行使容認へと憲法解釈の変更につながる立案事務を担当した人物であり、人事面で憲法九条の解釈変更の可能性を強くにじませた。さらに2月の衆院予算委員会で憲法解釈をめぐり、首相は「最高の責任者は法制局長官ではない。私だ」と答弁し波紋を広げた。国会内外、与党からも驚きと批判の声があがった。
 こんな国民不在の方法で国の重要な姿勢を変えてよいのか。
 安倍内閣は4月1日の閣議で、武器輸出を原則禁じた「武器輸出3原則」を「防衛装備移転3原則」と改め、輸出容認に転じた。これに先立つ昨年12月23日、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に従事する韓国軍からの「要請」を受け、国家安全保障会議の了承のもと、自衛隊が銃弾1万発を無償提供した。いち早く武器禁輸をなし崩しにする出来事だった。
 海上自衛隊は昨年8月、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の命名・進水式を実施した。護衛艦と称するものの、航空機の離発着を想定した平滑な飛行甲板をもちヘリコプターを搭載、旧日本海軍の中型航空母艦よりも大きく、軽空母といわれる艦艇に近い。専守防衛で敵基地攻撃能力である空母を持たない自衛隊の艦艇では異色で、近隣国は警戒感を強めている。そして同種の艦艇が現在も建造中である。
 今年2014年度から5年間の「中期防衛力計画」が昨年12月、安全保障会議と閣議で決定された。特徴の一つは「水陸機動団」の新設。そこで調達予定の水陸両用装甲車、オスプレイは米国海兵隊の装備と同じ。敵地へ上陸する作戦能力を備え、米国海兵隊と合同での戦闘行動を可能とするものである。
 現在憲法九条で戦力の不保持と交戦権を否定しているが、改憲が実現せずとも、政府が集団的自衛権行使容認の解釈改憲を行えば、米国との同盟関係を理由に自衛隊が日本国外で米軍と共同で戦闘をすることになる。一つひとつの出来事はバラバラにあるのではなく、日米同盟体制下、「積極平和主義」の名のもと、米軍と共に他国で戦争をおこなう国へと変わりつつある日本の姿がそこに現れる。
 日本を戦争する国にしてはならない。

【奈良保険医新聞第379号(2014年4月10日発行)より】


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