奈良県保険医協会

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県福祉医療制度の「改正」が実施されて

 8月1日から県の福祉医療制度の「改正」が実施され、当会としても受診抑制と生活不安を増大させる制度後退を阻止しようと取り組んだが残念でならない。
 対象患者さんへの周知徹底が十分行われていたとはいえなかった。医療機関の窓口で自己負担金支払い時に説明を初めて受けたのが現実である。内科中心の医院の状況を聞き取りで調べてみた。

過酷な自動償還―(マル老)(マル障)の事例

 老人医療費助成制度(マル老)を利用されているお年寄りの自己負担金が1割から3割になり驚きの声が上がっている。インスリン治療をしている糖尿病患者さんは一回の負担金が1万円以上になる。現物給付から償還制度へとかかり易さの後退は明らかである。所得が少ないので(マル老)保険証を持っている老人の受診抑制が確実に進行することが危惧される。
 さらに福祉医療制度の「改正」の財源を老人医療費助成制度(マル老)を5年間かけて段階的に廃止することにより捻出しようとしている。長期療養の必要な高血圧や糖尿病などの慢性疾患では65歳から69歳頃に臓器合併症が多発してくる。多臓器の合併症が進行すれば複数科の受診と高額な治療も必要になる 。所得の限られた経済的にも弱者の年寄りを狙い撃ちにする制度改悪であることが明らかである。
 身体障害者で現物給付を受けていた例では高額な窓口負担になることが明らかになっている。在宅酸素療法と人工呼吸器を使用していると窓口負担金が数万円にもなる。市町村の貸付制度があると言うが県下で利用された例はどれ程あるだろうか。窓口での立替を強いられることは日常の生活費にも影響してくる。医療機関から福祉医療費自己負担額支払い明細書が提出され、自動償還払いになるというが3カ月以上の支払い猶予期間が想定されている。

市町村でも連動して後退
今後の働きかけが重要に


 当会が行った各市町村への調査では、老人医療(マル老)は若干の市町村では独自に存続するものの、ほとんどが県と連動し廃止されていく。心身障害者(マル障)と母子(マル母)では所得制限が新たに導入されたり、一部負担金も撤廃するという市町村は僅かで大多数が連動して後退する結果であった。乳幼児医療(マル乳幼)では唯一、今回の「改正」で新たに助成を就学前まで拡充するという前進もみられた。そういった話も、自動償還がすべての市町村で導入され、窓口では一旦 3割を支払うことが前提である。
 小泉内閣は構造改革に伴う「地方税財制改革」を「三位一体改革」と称して推進している。国の財政難を理由に国の負担を大幅に減らしてきている。障害者自立支援法案は急遽の国会解散で廃案になったが、総選挙後の国会状況では更なる障害者の福祉医療の後退が危惧される。国の制度後退を容認せず、障害者や弱者の最後のよりどころである福祉医療を守る取り組みは、より広範囲の力を結集した地域での自治体への働きかけが重要になってきている。

【奈良保険医新聞第280号(2005年10月10日発行)より】

主張

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