奈良県保険医協会

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混合診療解禁につながる「患者申出療養制度」は阻止しよう

 新たな保険外併用療養費制度である「患者申出療養制度」は、来年の通常国会で法案提出され、2016年実施をめざすとされている。10月22日には中医協で議論が開始された。
 患者申出療養は、「評価療養」「選定療養」と並ぶ3つ目の新たな仕組みとして検討されている。「評価療養」は元々の先進医療などで導入されていた保険導入を前提としたもの、選定療養は差額ベッド代など保険導入を前提としないものとして従来からあった。患者申出療養制度も、「保険外併用療養費の一つである先進医療と同様の仕組み」と説明されているが、この患者申出療養制度が開始されれば安全性・有効性の根拠に乏しく、安易に医療が行われることになる。
 具体的には、患者からの希望があれば臨床研修中核病院の他、病院や診療所でも申請を行うことができる。平均6~7カ月かかっていた審査期間を原則2週間または6週間に短縮する。日本難病団体疾病協議会も、審査期間を大幅に短縮することで安全性、有効性が確保できるのかと懸念する立場を表明している。
 規制改革会議は厚労省レクチャーでも申請対象となる医療は限定しないことや、国の審査については短期間で審査するために会議開催を限定し原則として委員が資料を承認する持ち回り審議を活用するなど安全性、有効性の照明を担保する体制とほど遠い実態が明らかとなった。保険収載を前提とするのであれば評価療養の仕組みの中で対応可能であり、「患者の治療の選択肢を拡大する」とされているが国内未承認のがん治療薬などは多くが非常に高額であり、患者の経済力により受けられる医療に格差が生じてしまう。
 なお、日本再興戦略に基づき厚労省は「選定療養の利用実績に係る実態調査」を7月から開始している。さらに今後選定療養として導入すべき事例を把握するための調査が実施予定とされており、その結果をふまえ中央社会保険医療協議会にて選定療養としての導入検討を行うとともに、学会等を通じ定期的に選定療養として導入すべき事例を把握する仕組みを2014年度内に構築予定としている。これらの動きも注視していく必要がある。
 具体的な制度案は今後中医協で検討が行われる予定であり、厚労省や中医協委員への働きかけが重要である。新しい治療法や新薬の安全性や有効性の確認は国が行い、速やかに保険導入して欲しいという患者の願いに逆行し、混合診療解禁につながる患者申出療養は創設すべきでない。

【奈良保険医新聞第387号(2014年12月10日発行)より】


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